第41話
カマエルの真っ直ぐな瞳を、アズラエルは鼻で笑う。
「所詮は蛮族か。相容れぬな」
「ええ。貴方には地獄すら生ぬるい」
2人の魔力が膨れ上がり、大気が震えビルのガラスが砕け散る。
「死ぬがいい、愚かな蛇よ」
「死になさい、哀れな信徒よ」
向かい合う白い翼と黒い翼。その様はまるで、
「「神の名の下に」」
天使の決闘であった。
カマエルが手の平を向けると同時にアズラエルを取り囲む大気が爆発。瞬間爆風の中から10数本の腐肉の触手が飛び出し空気を割いた。
はばたき急上昇したカマエルは追ってくる触手を巧みに躱しながら、煙の中のアズラエルを目に映す。
「……ふむ」
焦げた肌がみるみる治癒してゆく。触手は服の下から這い出しており、今また3本増えた。
……とりあえずもう一撃浴びせてみるか。
翼を折りたたみ急減速、先を予測し攻撃していた触手群を逆にやり過ごし、直後はばたき加速。アズラエルに向け一直線で突っ込んだ。
「血迷ったか」
枝分かれした触手が真正面からカマエルに迫る。大規模な範囲攻撃、よもや逃げ場などない。
されどその網目を高速で縫う、白い残像。
人外の瞳が前後左右から押し寄せる猛威を見切り、反射的な速度で翼を繰る。急加速急上昇急停止急降下急後退からの急加速、全ての動作に途切れがない。
それは飛行と呼ぶにはあまりに滑らかで、爬行と呼ぶにはあまりに速かった。
「――ッ」
4枚の翼を自在に操り空を這う蛇に、アズラエルは全触手の切先を向ける。
360度からの掃射、躱すことなど不可能。枝分かれした100の触手が、風切り音を上げ一斉に放たれた。
――と同時に細断、木っ端微塵に吹き飛び炎上する。
「なっ⁉︎」
燃え散る火の中から急接近するカマエル。
その右手には順手で、左手には逆手で握られた炎の長剣。
彼は瞬きの内に、全方位から迫る100の攻撃をほぼ同時に斬り飛ばしたのだ。
途轍もない速度、途轍もない練度。その姿はフェスティバルで見せた彼とは全くの別物、別次元の領域。
彼が他国で不甲斐ない結果を残した際、メキシコでは一切批判の声が上がらなかった。なぜか?国民全員が知っていたからだ。
……本気になったカマエル・バルカサールに、敵う物なし。
濃いブラウンの髪が火の粉に照らされ金色に光る。
二刀一閃で黒翼と両腕を斬り飛ばし、続く三刀で首を刎ねる。その際驚愕に目を見開くアズラエルの生首と目が合うも、そのまま片手を振り上げる。
燃え上がる長剣が7本。胴体、両手、両足、両翼、そして頭部を串刺しにして落下、地上を行くゾンビを吹き飛ばし大地に縫い付ける。
眩い光が煌めき、
「『
直後大爆発を起こし、特大の十字火柱を打ち上げた。
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