第34話

 その後4人で軽く軽食をとりながら談笑したり、自室でハッスルする3人を覗きに行ったアリスがアホの子になって帰ってきたり何やかんや。


 東条は閉ざされたカーテンからチラリ、と暗くなった外を見て、ベッドから立ち上がりシャツを羽織った。


「え、もう行くん?」


「ああ、ちょっとノエル心配だわ」


「来なかったね、結局」


 立ち上がり下着をつけた灰音が、冷蔵庫を開け水を煽る。

 ネクタイを結ぶ東条を目に、紗命はシーツを手繰り寄せ、ムスッと口を引き結んだ。


「これからは3日おきってことで、よろしくな」


「……分かっとるよ」


「ノエルもちゃんと女の子になったんだね〜。僕らも何かする?」


「いや、今回ばかりはあいつの心の問題だからな。ノエルと俺で、ちゃんと納得できる場所を探すさ」


「ふふっ、りょー」


 チラリと目配せした灰音が嬉しそうにニヤける。


「まったく、何でそないなとこだけちゃんとしとるん、あんたは?」


「良いことだろ?」


「はいはい、ええことやよ」


 溜息を吐き苦笑する紗命と、抱きついてくる灰音と軽くキスをし、東条は礼儀正しく一礼する。


「では4日後、会える日を楽しみにしております」


「バイバーイ。電話してねー」


「行ってらっしゃい。……優しくしたってな」


「おう」


 ドアを閉めながら手を振る東条を見送った2人。


 枕に顔を落とす紗命を灰音が笑う。


「優しいじゃん」


「……だばべ」


 ……変に距離取られる方が逆に目障りなんや。それだけや。

 ノエルの挑発的な笑みを思い出し、紗命は苛立ちながらも、仕方なさそうに微笑んだ。



「……あの人達今日帰ってくれるよね?」


「何でだ、仲良くしなさい」


「怖いんだよっ」


 エントランスで靴を履いた東条が、嫌そうな顔をするアリスを笑う。


「お前も元気そうで良かったよ」


「何だし……よく通話してるじゃん」


「そういうことじゃねんだよな〜」


「んぬゃ⁉︎だからいきなり頭撫でるなクソなろう主人公かっ⁉︎女が頭撫でられただけで喜ぶなんてのは童貞オタクの妄想なんだよ!」


「うん、臭くないな」


「くッッそッ‼︎」


 蹴りを入れられながら手の臭いを嗅ぐ東条を、ユマがクスクスと笑う。


「すみませんねユマさん、今度はちゃんとノエル連れてきますので」


「いえいえ。恋に思い悩むノエル様も大変お可愛いですので、想像するだけで捗りますので、ふふふふ」


 そういえばこの人も業の人だった。東条は元気そうな2人を笑い、スマホを取り出し藜にメールを送る。


「俺に言い辛いこともあるだろうし、ノエルから何か相談されたら力になってやってくれな」


「……分かってるよ」


「勿論です」


「ま!アリスは恋愛経験ないでしょうけど⁉︎ヨホホホホ!」


「っこんのッ最後までぇえ!」


 瞬間リングを操作しゲートを潜った東条。


「――アビャ⁉︎」


 振り抜いた拳をからぶったアリスが、ビタンっ、とその場にぶっ倒れた。


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