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「こんな感じ?」
樹に走る血管と同じライトブルーに輝く、美しき正十二面体。その全てにノエルを写し、読み取る。
両の瞳を多角体結晶の様に変化させたガンマが、屈託のない笑みで微笑んだ。
「……魔眼か」
ノエルはその、人ならざる眼球を見て呟く。
『魔眼』……cellに内包された『鑑定』に類似する性質が、眼球という組織系統を通して発露した物。
総じてそれらの能力は見ることで発動し、使用者の視界に入ったが最後、逃れる術は圧倒的な魔力で弾き返す他ない。百発百中の脅威。
広義的には日本国総理大臣・見美の『命名権』。
葵獅の女・凛の『彩色の瞳』。
アメリカ大統領・フレデリックの『虚影』。
そしてノエルと東条の持つ『開闢の眼』も魔眼である。
しかしノエル然り、東条然り、性質が瞳に発露するということは、その能力がより深く、強力である証拠。
即ちガンマの持つ魔眼も、他の『鑑定』系能力とは一線を画すレベルだということに他ならない。
「綺麗でしょ!私結構気に入ってるの!」
楽しそうに回るガンマが、傍らの樹蛇を撫でる。
「……どんな能力?」
「見た通りだよ。ノエノエをそっくりそのまま写せちゃう!」
バシっ、と決めたピースの中で、正十二面体がキラキラと光る。
「ねぇねぇ、ノエノエもでしょ?ノエノエの眼には何が映ってるの?」
「……内緒」
「えー⁉︎ずる!ずるずる!」
濃紫の瞳を縦に割ったノエルは、その美しい蛇眼にプンスカと指を指すガンマを映す。
ノエル達王の持つ『開闢の眼』は、魔素という元素そのものを見る。
東条が自衛隊を殴殺する前、雪の中で姿を隠していた朧を一瞬で見つけられたのも。2人がハンター加入テストの際、犬とケルベロスがオリビアの配下であると最初から見抜けていたのも、全て魔素の形、流れ、その繋がりまでもが詳細に見えていたからである。
Cellや魔法は、全て魔素を根源として創られる。その根源が見えてしまうのだから、不可視だろうが何だろうが、1㎜でも動いた瞬間、次の挙動、発動する場所、威力、射程範囲、大まかな能力の判別、その能力が及ぼす影響etcを事細かに知覚出来てしまうのだ。
まぁ知覚出来るからと言って、全て防げるかは別問題。沖縄のディノニクスや、使徒といった一定以上の強者は、その壁を優に超えてくるから困ったものなのだ。
「……」
そしてそんな眼に映ったガンマは、体内魔素、纏う魔力量、あらゆる能力がノエルと同等値まで爆増していた。
敵が強ければ強い程強くなるとは、剣八でも名乗ったらどうだろうか?
そんなことを考えながら、ノエルは侮りを捨てた。
……例えるならこれは、自分自身との勝負なのだから。
「……ごめ、ガンマ。手加減出来ない」
「こっちのセリフだもん!」
昨日の友は今日の自分。
可愛らしい頬をニヤリと歪め、2人は笑った。
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