3
「……ごめ、ガンマ。手加減出来ない」
「こっちのセリフだもん!」
互いに頬をニヤリと上げ……刹那2人の姿が掻き消え――
「――ッッッッッッッッッッッ」
「アハハッッッッッッッッッッ!」
――ると同時に轟く金属音と幼い笑い声。そして始まる史上最高速度の剣戟、と並行して行われる大規模な攻防。
半透明の樹蛇がノエルに襲いかかるその横頭を樹蛇が噛み砕く、横っ腹を喰い千切る半透明樹蛇、を締め砕く樹蛇が襲いかかって来た半透明樹蛇と頭部を爆散させながら暴れ狂い喰い合う。
1匹10mを越す合計20匹の互いの樹蛇が、粉塵を巻き上げ大地を爬行し砕け散りながら再生を繰り返し喰らい合う。化物同士の殺し合い。
――ッッバギャギャギャガギゴギャギャギャギャッッッッッッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎
の中心で、最早剣戟などとは呼べない激音を鳴らす本物の化物。
――ノエルが樹刀を袈裟斬り刃を返し薙ぎ払い、逆袈裟からの振り下ろし一閃刺突斬り上げ一文字――
――ガンマが半透明の樹刀を逆袈裟刃を返し薙ぎ払い、裟振斬りからの振り上げ一閃刺突斬り下げ逆一文字――
互いに首に迫る切っ先を躱すと同時に左足を大きく踏み込み半回転、背面へと思いっきり振り抜いた
「「――ッッ‼︎」」――バガァァンッッ‼︎
刀が衝突、木っ端微塵に砕け散る。
「『ロゼ』」
「『ロゼぇ!』」
瞬間足元から突き出した鋭利な荊に同時に飛び退く。
互いの獲物の血肉を啜ろうと高速で2人を追う荊を、しかしそれぞれの樹蛇が一瞬ですり潰しそのまま激突。
木片が飛び散る背中の上を疾走する残像が2つ。
「――ッアハ、ハッッ!」
ガンマが膝を曲げた直後、樹蛇が真っ二つにへし折れる。打ち出された彼女
「ぁえ⁉︎」
の足に蔓を引っ掛けたノエル、が振り被る巨大木製ハンマー。
「――ッ‼︎」
「ゴフッ⁉︎」
直撃、爆速で地面に叩きつけられたガンマはしかし無傷。すぐに立ち上がり
「っアh――
瞬間間髪入れずに振り下ろされたハンマーにプレスされる。
大地が放射状に吹き飛び、ハンマーが砕け散り打ち上がる粉塵、の中から盾を投げ捨てたガンマが跳び出す。
「ッ楽しいねぇノエノエェエ‼︎」
金髪を振り乱すその目が宿す、幼く純粋な闘争本能。
ガンマの目元から伸びていたライトブルーの血管が全身へと広がり、ノエルの魔力を自身に適応させてゆく。
更に跳ね上がる身体能力と感知能力が、彼女を人外の領域へと踏み込ませる。
「こっちの方が良いッ‼︎」
両手に半透明の樹双剣を生み出したガンマが、寸前でしゃがんだノエルの毛先を斬り飛ばし突っ込んできた樹蛇を真っ二つにする。
「アハッ!アハハッ‼︎」
「――……」
……オリジナルの武器まで作り出した。ノエルは動き回る蛇から蛇へと跳び移りながら、高速で乱舞する双剣を盾と短刀で捌き、観察、分析する。
見た技しかコピー出来ないと思てた。けど、そんな制限ないらしい。
地面を操らない所を見るに、向けられた魔力しかコピー出来ない?念の為『フィツィロ』を産むのはやめる。めんどくさくなりそう。
「よそ見はダメだよッノエノエ‼︎」
「――ッ」
瞬間足元の蛇から樹槍を突き出すと同時にジャンプしたガンマの空中回転3連蹴りが、ノエルの頬を蹴り飛ばし鈍い音を鳴らす。
槍に脇腹を裂かれ蹴りによろめくノエルに、躊躇なく両双剣を振り被るガンマ
「ッうりゃッァグぇ⁉︎」
の土手っ腹に一本の樹槍が突き刺さり身体をくの字に曲げる。
蹴りの直前脇の影に隠した短剣を槍に変形させ突き出していたノエルは、
「ッん」
「ッぅゲェ⁉︎」
押し出した槍の柄頭を蹴り飛ばし、穂先を深くめり込ませその小さな身体をブッ飛ばした。
積もった木片に着弾し地面を盛大に削り、吹き飛ばし、爆煙を上げた砂煙の中、
……すっくと立ち上がる影。
「あははははっ!」
「……」
ボロボロのユニフォームを風に靡かせ、心底楽しそうに笑うガンマ。
……それは執念でも、覚悟でもないように思えた。
観客にはそれが、どこか歪で、どこまでも純粋な狂気に思えてならなかった。
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