2
「っやっぱ透明化か!」
即座に後退したサムが、急いで辺りを見回す。
昨日のパーティで見た能力。物質の姿形だけでなく、魔力や体温、微細な気配まで消失する完全な透明化。
対人戦においてこれ程凶悪な能力もまぁ無い。心底嫌そうに頬を上げるサム。
の懐に既に入った朧が、冷静に、音も無くサバイバルナイフを引き抜く。
「……」
……サム エヴァンス、獣化系、モデル『
事前に調べた情報では、俺の透過を破る術は持っていない。
対してこっちの人間は俺のcellに詳しくない。
遊ぶ気なんて毛頭無い。
戦闘なんてのは、終わるのが早ければ早い程良い。
飛ばれる前に、仕留める。
――閃く青銀色の刃。
サムの頭上に落雷を発生させると同時に、本命の不可視の刃で喉元を掻っ切った。
瞬きの内に終わる、上下からの無慈悲な同時攻撃。
鮮血が舞い、サムが倒れる。
――筈だった。
「なんてな」
「――ッ」
瞬間こちらを凝視する、丸く収縮した黄色い瞳と目が合う。
頭上を庇う変化した黒い右翼と、こちらのナイフをピンポイントで弾いたサバイバルナイフ。
朧はすぐさまバックステップで距離を取り、顔を上げる。
……見えている?
「ハッハッハ、慎重だな」
サムは腰から抜いたサバイバルナイフを左手でクルクルと弄びながら、大きな右翼を腰に当てニヤリと笑う。
「……」
朧はその黒い羽毛をジッと見つめながら、高速で頭を回し次手を組み立てる。
1:あの羽毛が硬く、魔法を弾くのは予め分かっている。
2:問題はどこまで見えてるか。
3:猛禽類の視力は人間の約10倍。けど目が良いだけで俺のcellを感知するのは不可の――
「来ないのか、よッ」
(っ、……)
振り抜かれた右翼から飛び出た羽矢を切り飛ばし、バックステップ。
「シッッ」
「――ッ」
一足で急接近したサムのナイフが風を切る。
一撃目を躱され、手首を捻り流れるようにナイフを顔の横に構え、――一気に突き出す。
「っ、ッっ、(チッ)」
首を傾け躱した朧は、間髪入れずに迫るナイフと黒翼の連撃をステップとナイフで躱しいなす、と同時に重心を逆に運び地を蹴る。
振り抜いたナイフを躱され振り下ろされる黒翼を躱し、鋭利な羽によってズッパリと切れた地面に心の中で舌打ちする。
……落ち着け。冷静に考えろ。何を見落とした?
(ッ『雷薙!』)
「ッぬ⁉︎ンッ」
朧が地面に向けて叩き下ろしたナイフから鞭の様に伸びた雷刀が、サムの頭部に直撃。
電撃を撒き散らす。
しかし、
「効ッかねぇなぁ!」
首上部を獣化したサムが高らかと叫ぶ。
最早人間の面影の残っていない頭部が、電光で濡れ羽色に輝いた。
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