3−4

 いきなり斬りかかってきたノエルの大剣と、振り上げるリアンの大剣が同時に爆炎を吹き加速。ゴギャギャギャッッ‼︎とエグい音を立て衝突、拮抗、


 した刹那リアンは噴射を止める。当然押し負け物凄い勢いで身体を持っていかれる、その勢いを利用し前宙。噴射、加速、遠心力を乗せたまま、


「――ッお返し、だっ」

「――ッんぬ」


 大上段から大剣を振り下ろした。


 受け止めたノエルの足元が放射状に割れる。やはりこの歪な剣の扱いは、リアンに一日の長がある。


 ノエルは噴射を後ろから前に切り替え、柄のボタンを押す。


「ポチッとな」


「ッおじさんそれ知らない!」


 土大剣に生える全ての棘が爆散、リアンに向けて発射された。


 彼はローブで身体を隠し跳躍、銀鱗で棘を弾き大剣の噴射で横に飛んだ。


 急接近から振り下ろされた土大剣は、しかし空振り地面をゴッソリ抉る。棘は既に修復済み、リアンは冷や汗を飛ばしながら微笑む。


「ん!」

「よっ」


 互いに回転、衝突した大剣が空気を揺らす。

 爆炎の噴射と身体能力を駆使したアクロバティックな打ち合い。響き渡る棍棒と金属バッドをカチ合わせたような異常な轟音。大剣の破片が飛び散り、削り散り、吹き飛ぶ、超重量級の殺意の殴り合い。


 リアンがが踏み込み腰を捻り、爆炎を噴射、殴り上げる――


 ノエルが空中で身体を横に倒し腰を捻り、白炎を噴射、1回転し殴り下ろす――


「「『――Blast』」」


 轟音。

 上下で打ち合わされた鋭利な鈍器は、2者の剛力に耐え切れず爆砕。


 衝撃で吹っ飛んだノエルがスタ、と着地、


「っわ」


 即座に飛び退く。

 直後彼女の立っていた場所を、天からの光芒が押し潰した。


 打ち鳴らされる、歪な骨から削り出された銀色の錫杖しゃくじょう


 大剣をキューブに戻したリアンは、錫杖をノエルに向けロックオン。

 フォンッ、という神秘的な音と共に降り注ぐ光の束。予備動作を一切必要としない天からの裁きが、ノエルに直撃し地面を溶解させた。


 リアンは彼女から距離を取り、呆れたようにポリポリと顎を掻く。


「……いやぁ、どーしよ」


 光の雨の中、陽炎に白髪が靡く。


 高熱の光線の中心で、大きな唐傘をさし悠然と直立するノエル。その幻想的な光景は、まるで1枚の絵画の様。


 ノエルは足元の溶けた地面を軽くタップ。その場からヒョコ、と顔を出した芽に、ノエル水を垂らす。



「『龍血樹』」



 葉にノエル水が触れた瞬間、爆発的に成長を始めるソレは、瞬く間に幹を太く、枝を広く多く伸ばし、ものの数秒でドームから空を消した。


「……いやぁ、ほんとにどーしよ」


 これじゃあ太陽光を媒介とするこの技が彼女まで届くことはない。封じられちゃったなぁ、そう暗くなった天を仰ぐリアンは、ギョッと目を見開く。

 ……数100はある全ての枝が、グネグネと動き出し自分を見たのだ。

 まるで、獲物を見定めた龍の様に。


 あ、これヤバいやつだ。

 即座に判断したリアンは錫杖を地面に突き刺し魔力を込める。


 刹那ノエルごと大樹を囲むように、5つの焼け跡が光を放ち、繋がり、魔法陣を形成した。


 作成される巨大な五芒星ペンタグラムの中心、ノエルは悟る。

 自分と関係ない場所に光を落としたのは、このためだったか。


 光輝く錫杖を掴みながら、リアンは悟る。

 間接視野に映る、暗がりから跳び出す人型のゴーレム。あれは……ルージュちゃんを半分こした、その小型版か。上の大技に注意を集め、暗がりに本命を仕込むとは、いやはやエゲツないねぇ。


 遅々として流れるコンマ数秒の判断の中、2人の思考は同期した。



 ――((ハメられた))



「喰い散らせ」

「『Meteorミーティア』」



 天井を埋める龍頭。

 その大樹を丸ごと呑み込む大光芒。

 極光に顔を顰めるノエル。

 ハンマーに銀鱗を砕かれ血を吐くリアン。

 光と質量と音の乱舞。

 直後、闘技場が爆発し粉塵で埋め尽くされた。

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