3−3


 姿勢を低く構えたリアンは、ローブの下のポーチから黄色い鱗を選び、弾丸に変え装填。

 切り裂かれる砂煙を目に、マスケットを天に向けて発砲と同時に横に跳ぶ。


 直後リアンの足場から荊棘が飛び出し、鎌首をもたげる。標的をその鋭利な棘に映し、即座に地を這い彼を追いだした。


 爆発を樹盾で防いだノエルは砂煙を晴らし、リアンに向け攻撃を開始。

 しようとした瞬間鳴り響く銃声に上を向く。


 ――リアンが跳躍と同時に天に放っていた1発の黄色の弾が、空中で破裂。


 ――ノエルが樹盾を分解し数10本の鞭に変形。


 数100の凶弾の雨と超高速で振るわれる鞭が衝突し、連鎖する爆発が空を埋め尽くした。


「なぁんであれを捌けるかね、っとと」


 地を駆けるリアンは、枝分かれし迫って来る荊棘に5発発砲、着弾、爆炎。ジャンプと共に足元に発砲、飛び出そうとしていた荊棘を凍て付かせ、


「――ッおっと」


 首を逸らし青い弾をリロード、ノエルがぶん投げた樹槍をスレスレで躱し、着地と同時に銃身を左腕に置き標準を合わせた。



 ズゴァンッ‼︎



「「――ッ⁉︎」」


 刹那、両者同時に驚く。


 ノエルは自身の展開した樹盾が貫かれる光景を横目に。


 リアンは盾の影から放たれた樹矢に抉られる銃身を横目に。


「あらら」


 使い物にならなくなったマスケットを手に、片手を懐にしまい1歩引いたリアン。


 しかし反対にノエルは1歩踏み込む。

 銃は潰したけど、盾を貫ける遠距離攻撃があと幾つあるか不明。距離を取られるのは厄介。詰める。ん?


『阿修羅』を纏い地面を踏み抜いたノエルが、瞬きで距離を消す。

 振り抜いた土剣は、


「『Blast』」

「――っ⁉︎」


 しかし同じく、斜め下から爆風と共に振り抜かれた大剣によって砕き飛ばされた。


 リアンは片手で振り上げた刃を手首を返して逆に、直後大剣の背面からジェットが噴射、爆速で振り下ろされた銀閃がそのまま地面を吹き飛ばした。


 パラパラと土塊が舞う中、リアンは壊れたマスケットをキューブに戻して仕舞い、大剣を肩に担ぐ。


「うそぉ、これも読まれてた?」


「手隠すの見えた。誘ってたのは分かった」


「おじさんもう怖いよ」


 余裕で躱したノエルは、彼の肩に担がれる大剣をマジマジと見る。


 銀色に輝く威容。

 巨大なモンスターの爪を隙間無く埋め込んだ、斬るというよりは押し潰し抉り飛ばすことに特化したエグい構造。

 そして1番の特徴は、背面に付いた噴射口のような物。


「カッコイイ。見せて」


「ん?いいぞー」


 見せて見せてと両手を出すノエルに、リアンは普通に大剣を渡す。


「ほら、ここがポイントなんだ」


「おー。……魔力を爆炎に変換してる?」


「おお、よく分かったねぇ。これの元にしたモンスターの特徴でね、その器官を武器に組み込んだの」


「おー」


 ペタペタと触ったり噴射口を覗いたりした後、ノエルも普通に大剣を返す。


「ありがとござます」


「どーいたしまして」


 ぺこりと頭を下げるノエルに、リアンもぺこりと頭を下げる。


 空気感についていけず困惑する観客をほったらかして、2人はもう1度距離を取った。


「それじゃぁいいかな?」


「まだ」


「あいよー」


 足元の土をペタペタ弄るノエルを微笑ましげに眺めながら、リアンは大剣を地面につき休む。


「リアンのcell、モンスターの武器化?」


「んー?そうだよ。凄いでしょ」


「凄い。さっきの銃はどういう原理?鱗で弾の種類が変わるのは分かった。でも弾によって合う合わないもある筈。属性とか」


「はははっ、そこまで分かっちゃってたかぁ。あれはねぇ、作るの苦労したよぉ。

 魔法に耐性のあるモンスターと、遠距離で攻撃するのが得意なモンスターを何10種も掛け合わせてね」


「……ごめ。壊しちゃった」


「いいよいいよ、新しくカスタマイズするから」


「ノエルにも作って」


「あーごめんね、僕しか使えないんだよ。この力で作った武器」


「ちぇっ」


「いきなり冷たいなぁ」


 苦笑するリアンは、柄尻から顎を離し、大剣を担ぐ。


「それじゃ、いいかな?」


「ん。っじゃん!」


「……へ?」


 ノエルが地面から引っこ抜いた剣を見て、リアンは固まる。


 巨大な植物の棘を隙間無く埋め込んだ、斬るというよりは殴り殺し抉り飛ばすことに特化したエグい構造。

 そして1番の特徴は、背面に付いた噴射口のような物。


 ノエルはボッ、ボッ、と噴射口から白い炎を噴き出させ、具合を調整する。


「な、何それ?どういう原理?」


「爆発性の種を燃焼させてる」


「どうやって燃焼させてるのさ?」


「んー、ノエルもよく分からない」


 リアンはガックシと肩を落とし、悲しそうに笑った。


「……やっぱり見せるんじゃなかった」


「おりゃッ!」


「ッおじさん悲しんでるんですけど⁉︎」


 いきなり斬りかかってきたノエルの大剣と、振り上げるリアンの大剣が同時に爆炎を吹き加速。

 ゴぎゃギャギャッッ‼︎とエグい音を立て衝突し、周囲の瓦礫を吹き飛ばした。

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