57話



 闘技場に全チームが集結し、花火が打ち上がると同時にホログラムがブォン、と出る。

 映し出されるのはトーナメント表。


 司会者が何か叫んでいる中、東条は銀とオレンジのユニフォーム達を横目で見る。……あ、目合った。めっちゃ睨むじゃん。


「ッ第1試合はニューヨーク対ハワァイ‼︎いきなり優勝候補同士のマッチダァ‼︎我らがオリビアを降したその実力ッ見せて貰おうじゃぁねぇノォ‼︎」


 ハワイぶっ飛ばせコールで湧く会場を鬱陶しげに、朧がいつも通りの冷めた目でトーナメント表を眺める。


「……これ、俺達2戦目でカリフォルニアと当たりますね」


「カリフォルニア?……あ〜、強ぇなアレは」


「腕が鳴る」


「葵さんあの先頭の人と戦ってよ。なんかさっきからめっちゃこっち見てる。怖いわ」


 ベルナルムの挑発を無視し、東条はノエルの背中に隠れる。


「その猫耳めっちゃ可愛いな。後で写真撮ろうぜ?」


「ん。マサも付ければ良かた」


「似合わん似合わん。……どうよ?」


「……ん」


 ノエルは猫耳をぴょこぴょこしながら、カリフォルニア、ではなく青と金のユニフォーム達を睨む。その先頭に立つ男を。


「……マサの言った通り。マサと同じ臭いする」



「つーことは、」


「ん。あいつも使徒と融合してる」


 東条は横目でウインクしてくるガブリエルを鼻で笑う。


「まさか、俺以外にそんな奴がいるとはなぁ」


「あと、あの魔力の流れ」


「ああ、バチバチ既視感あるな。……キメラかアイツ?」


 大阪で戦ったゼノに、体内魔力の流れが酷似しているのだ。

 加え内包エネルギー量は、あの化物の遥か上。自分よりも多いノエルや灰音の、その更に上だ。


「ダークホースだなぁ。ありゃcellか?」


「ん。完全に魔力消してる。ノエル達みたいな眼が無いと一般人と区別つかない」


「朧みたいだな」


「……俺のは見えないだけで実態はあります。『ペルフェクシオン』なら消せますけど、あれはまた、別の系統でしょ?」


「ん。獣が気配を断つ感覚に近い。ライオンあれ出来る?」


 ライオンこと葵獅が首を振る。


「お前が出来ないのに俺が出来るわけないだろう。あいつの試合は見たか?」


「「「ん」」」


「試合毎に発現する獣の特徴が違ったろ。あれは恐らく、そういうcellだろう?」


「……厄介ですね」


「でも当たるとしたら決勝だろ?」


「ん」



 カリフォルニア陣営。

 そんな彼らを見ていたベルナルムを、ガンマが指差す。


「あははーベルナルム無視されてる」


「…………黙れ」


 顔面に青筋を走らせ、彼は怒りを我慢するように息を吐いた。




 ペンシルベニア陣営。


「ね、ねぇ、何で私達、睨まれてるの?」


「知るかっ……身体が、動かねぇ」


「やはり俺達には、早かった、か」


「人気者じゃん!イェーイイェーイ!」


「っバカ、動くなガブリエル!死んだふりしろ!」


 ハワイ陣営とカリフォルニア陣営、最強格2者の魔力に睨まれ、3人は必死にガブリエルを抑えようとするのだった。

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