50話
――パークの¬目玉アトラクション、魔法アスレチック。
挑戦するハンターがまた1人吹っ飛ばされ水に落ちたのを見て、足を止め応援していた観客達は「「「Oh〜〜」」」と残念がる。
「アハハ、サ◯ケみたい」
「ノエルやりたい!」
「あれ一般人クリアするの無理だろ」
火の玉とか出てたぞ?笑う東条にキャストが目を付ける。
「『⁉︎そこにいるのは、まさかあのMr.キリマサ⁉︎どうだ挑戦してみないか⁉︎』」
「あー」
期待の騒めきに頭を掻きながら、手を引っ張るノエルを見る。
「やる!」
「じゃあ僕もー」
「うちは見てるさかい、行ってらっしゃい」
「紗命これ持っててっ」
「はぁい。頑張ってなぁ」
「あ〜、これ3人で出来ます?」
「『勿論!競争だな!難易度は!』」
「1番上!」
「おい」
「『なんと!最難関をご所望だ!我々は運が良い!このパーク初めての
ブチ上がる歓声と共にキャストがボタンを押すと、ガシャンガシャンとアトラクションが3人用に変形し、デカくなってゆく。いやすっご。
完成しゴール地点から吹き上がる火炎に、何だ何だと周囲からも人が走ってくる。キャストも走ってくる。仕事しろ。
「『ヘルモードは身体強化が前提のモードだ!G1だってクリアは難しい!何たって製作者はあのステラ代表だ!ナメてたら痛い目見るゼェ⁉︎』」
上がる悲鳴を耳に、3人横に並び位置に着く。
「これ負けた人、昼食奢りね?」
「ん」
「良いじゃん」
ニヤリと笑う灰音に、東条とノエルも不敵に笑う。
キャストが手を振りかぶり、
「『おーし準備は良いかァ⁉︎3、2、1、スタートォ‼︎』」
盛大にブザーが鳴った。
瞬間底が抜ける。よりも速く地を蹴った3人が笑う。
「きったね⁉︎」
「お先ぃ!」
水の上に点在する不安定な足場を猛スピード駆ける。そもそも水の上を走れる3人に、この程度の仕掛けは障害にすらならない。
と思いきや、
「ッ⁉︎」「っ」「っぶな⁉︎」
すぐさま跳び退いた東条の足場が爆発。打ち上がる水煙に観客が口を開けたまま固まる。
しかしメチャクチャに仕掛けられた爆弾の起爆より速く走る3人は、余裕で第1関門を突破。
瞬間3人揃ってすっ転ぶ。
「ローション⁉︎ぶぇ」「わっ」「アハハっ」
同時に前方から乱射される火炎球が東条の顔面に衝突し弾ける。
下半身を蛇型にしてスイスイ進むノエルが1歩リード、ブレイクダンスの要領で起き上がり滑るように躱す灰音が2番手、
「ぶぇっヴァっあづっっウゼェッ⁉︎」
火炎球を全部蹴散らし突っ込む東条が出遅れる。
第3関門に見えるのは並行に配置されたアクリル板。ローションの次にスパイダーウォークとか製作者バカだろ⁉︎
ノエルがわざと火球にぶつかりローションを気化、
灰音が高速で足を振り抜きローションをノエルに向け飛ばす、
東条が靴を脱ぎ飛ばし両足を加熱、
「ぁぶ⁉︎」「痛で⁉︎」「ハッハッー!」
ノエルの後頭部にローションが、
灰音の後頭部に靴が、
東条が一気に1位に躍り出る。
3者ダンダンダンッ!と手など使わず跳躍のみで第3関門を突破。
「卑怯だぞ⁉︎」
「灰音も!」
「勝ちゃ良いんだよ勝ちゃあ!」
メチャクチャに可動する足場と四方八方から襲い来る回転巨大ハンマーを楽々潜り跳び乗って躱して滑り第4関門突破。
天井から吊り下がる不安定な長い鉄パイプにジャンプし、遠心力と握力のみで飛び移ってゆく。
「1位は俺のモンだぜぇ‼︎俺のケツでも拝んで」
灰音がパイプを掴むと同時に身体を捻る、
「うりゃァ!」
「やがぁ痛ダァ⁉︎」
「らっきー」
横向きに振り抜かれた鉄パイプが東条のケツにクリーンヒット。灰音が1位に踊り出る。
目の前には3列に分かれた道。重量順に並べられた5枚のコンクリート壁。ウォールリフティング。
「「「――ッ」」」
速度を落とさず突っ込んだ3人は、あろうことか片手でコンクリ壁を持ち上げまくり、最後の1トンの壁を上にぶん投げ、割れんばかりの歓声と共に同時に横に並ぶ。
眼前に聳えるのは最後の関門。
反り立ちすぎた壁。
全長50mのほぼ垂直の壁に向かって、
「ウラァッ」「ハハハッ」「ンッ」
3者同時に一気に加速。
垂直など物ともしないそのスピード。
これは同時ゴールか、観客の全員が喜びに手を掲げようとした、
その時だった。
――このアトラクションの最後の仕掛けが、そんな親切な筈がないのだ。
「「「――ッは⁉︎」」」
壁の頂上から大量の水が投下。激流の滝となり、3人に襲い掛かった。
東条の思考は一瞬。壊さない程度に壁にしがみ付き、魔力を充填。狙うは正面突破のみ。四肢に力を入れた。
刹那――彼女達2人の思考が、東条を上回った。
「ノエル!」「灰音!」
「へ?――ぅげ⁉︎」
灰音とノエルが同時に東条の腹に蹴りを入れ、木に張り付く虫よろしく壁から引き剥がす。同時に跳躍、空中の東条を足場にして、一気に跳び上がった。
「――っふっざけぉおぼぼぼぼ⁉︎⁉︎――
瀑布に流され消える東条を見送り、2人は頂上に着地。
「「せーの!」」
一緒にゴールのボタンを押し、打ち上がる花火と共に爆発する盛大な歓声に手を振った。
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