49話
「おぉ、すっご。見てみノエル」
「……ん〜」
窓を覗き、雲の隙間から眼下を見下ろした東条は、自分の膝に頭を預けていたノエルを揺らす。
「わ」
「規模エグくね?」
上空から見ると分かる。カリフォルニアの端っこが全部キラキラ光っている。もしあれが全部祭りの会場なら、近くの小島など軽く全て呑み込んでしまえる程の範囲だ。
興奮にバタバタと用意を始めるノエルの音に、シートを豪快に使い寝ていた灰音と紗命も目を覚ます。
各々準備を始めるそんな光景を目に、東条も身体を伸ばした。
着陸したジェットから降りた4人は、照りつける太陽に目を窄める。最高の祭り日和だ。
「ええ天気やなぁ」
「ぅくぅ〜〜、よく寝たー!」
色違いのアロハシャツで揃えた彼らは、機長に礼を言ってから送迎車に乗り空港を走る。
「あぁノエル、これ持っとき」
渡されたVIPカードを首から下げ、小さいリュックを背負ったノエルがフンフンと席の上で飛び跳ねる。
このフェスティバル、初日から1週間の入場は許可制。VIPとして招待された者と、抽選に通った2000万人のみが入場を許されている。
それ以降は1年を通して一般公開され、アメリカ最大のテーマパークとして運営されることが決定している。
4人は隣接された空港を抜け、入口へと向かう。
「Welcome to the Grand Festival. May I see your card?」
キャストにカードを見せ、入場特典の電子リストバンドを腕に付けてもらう。
「フェス内での購入品は、全てのこのリストバンドでの決済となります。無くさないようお願いします」
「「「「はーい」」」」
「では、Please enjoy this festival of greed!」
走ってゆくノエルと灰音を歩いて追いながら、東条と紗命はリストバンドを弄る。
「うぉっ、すっげ」
ヴォン、と出たホログラムのパーク内地図に、2人がビクっと固まる。
「ホログラムもタッチ出来るで」
「……もう映画の中の世界じゃん」
エリアごとにアトラクション、宿泊施設、闘技場、飲食、展示場、数えきれない程の施設がある。加えて1つ1つのエリアのデカさが異常。これがアメリカか……。最早驚きよりも笑いが漏れる。
「……広さ約8万㎢ってどんなだ?」
「想像つかへんわぁ」
立ち止まっていた東条に、「マサ遅い!」とノエルが走って戻ってくる。
「ノエル、広さ8万㎢だってよ」
「ん。北海道と同じくらい」
「北海道⁉︎」「すっご!」「わぁ」
「世界で1番おっきいテーマパークがフロリダの◯ィズニーワールド。そこが122㎢だから、世界1約655個分。因みに◯ィズニーワールドはノエル達がいた山手線内の1.5倍。頭おかしい」
「とんでもねぇな」
興奮して早口になるノエルに手を引かれ、東条はその規模に呆れ笑う。これを1週間で回るのは無理な気がする。
「てかノエルお前、めっちゃ予習してるじゃん」
「ん。楽しみにしてた。のにマサが寝坊したせいで花火見逃した」
「お前も寝てたろ」
「ん。不覚」
「昨日海で騒ぎすぎたなぁ」
「最後のハワイだったし、しゃぁなし!」
笑った灰音が片手を振り上げる。
「よーし楽しむぞー!」
「「「おー!」」」
「ふふっ、走ると危ないでー。……あ、」
ビタンッ、とすっ転んだノエルを、陽気なミュージックと微笑ましい視線が迎えた。
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