51話



「……ひ、人かお前ら?」


「人じゃないもん」


「勝ちゃ良いんでしょ?」


「ふふふっ」


 ビチャビチャと這い上がる東条が、楽しそうに笑い合う3人をジトー、と睨みつける。まさに鬼畜、なんて奴らだ。俺でもあんなことしない。


「てことで桐将君っ、ごちになりま〜す」


「「まーす」」


「え、紗命も?」


「え?ちゃうの?」


 キラキラと自分を見てくる紗命に、東条は呆れ溜息を吐く。1番美味しいポジション持ってきやがって。可愛い奴め。


「︎……あいよ。食いてぇもん決めとけ」


「「「わーい!」」」


 ハイタッチする3人に東条は苦笑する。


「紗命」


「はぁい」


 彼女が指を振ると、東条の服から水分が離散。しかし、


「うへ、ローションベタつくな」


「ぬるぬる〜」


「見て見てっ?エロくない?」


「やめろ押し倒すぞ」


「やめぇや、はしたない」


「水着だし良いじゃんよー」


 服を下に引っ張り透けた黒いビキニを強調する灰音と、マネしようとするノエルを叱り止める紗命。


 3人は未だ興奮冷めやらぬキャストと握手してから、2枚だけヘルコースゴール記念のステッカーを貰い別れた。


 東条は歩きながらリストバンドを起動。


「Search, Clothes Shop」


 マップ内に赤いポイントが付く。


「んじゃまず服買いに行こうぜ」


「ん」


「ちぇー、せっかくお揃いコーデにしたのに」


「いきなりはっちゃけすぎなんよ」


 数10分後。


 白いドラゴンっぽいフリース着ぐるみを着たノエルが、トテトテと走って店から出てくる。そのあまりの可愛さに通行客がバタバタと失神。


 3人も各々キャラTやカチューシャを着け、パークに染まり再登場。これでようやく、この祭りを楽しむ準備が出来たというもの。


「お前それ暑くないの?」


 東条がカチューシャ型サングラスを上げ、小さな尻尾を振っているノエルを笑う。


「ん。中にクーラー付いてる。涼し」


「すっげ。俺もそれにしようかな」


「20万」


「やっぱいいや」


 シャツの縁を結びへそ出しコーデにした灰音が、ノエルのフードのツノをつつく。


「これ何かのキャラなのかな?」


「知ぁない。蛇っぽかた」


「このパークのマスコットらしいで?可愛らしくてええやん」


「ん」


「おら飯行くぞ〜、っとと」


「おー!」「お〜」「ふふ、」


 東条の肩に飛び乗ったノエルが、その小さなドラゴンブローを高らかと突き上げた。


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