40話 ※エッチです
細身の150㎝の色白い肢体と、濡羽色のショートヘアのコントラスト。
スラリとした170㎝の小麦色の身体は、程よい筋肉と女性特有の膨らみを内包した完全美。
まるで違う特徴を晒す彼女達の裸体は、『美』という観点に於いて、等しく完璧で、究極的であった。
「……なんか、久しぶりやと恥ずかしいなぁ」
「……ぁはは、分かる」
東条は走るノエルを追いかけながら浴室に入り、
「――っ……」
ビクッ、と手で胸を隠す2人を見て固まる。固まる。
「……き、桐将く〜ん?お〜い」
「ふふっ。……目ぇ、怖いで?」
「っあぁ、すまん、いや、……見惚れてたわ」
何だ今の?一瞬脳をハンマーでぶん殴られたような。そんなに溜まってたのか?いやでも1年ぶりだし。
東条は限界まで収縮した蛇眼をそのまま、バクンバクンと鳴る心臓を無視してシャワールームへと急ぐ。
「わぷ」
「せっま」
「黒百合あんた太ったんちゃう?」
「はぁ⁉︎見なよこの抜群のプロポーション!」
「ちょ、暴れんなっ」
「「「「冷たぁ⁉︎」」」」
バタバタと騒ぎながらも何とか身体を洗い終わった4人は、微妙に疲れながら湯船に足を着ける。
浴室全体に展開されたお椀型の漆黒の中に波打つ、薄緑色の液体。
ノエルが用意してくれたノエル風呂に、東条は痛む傷を我慢して全身浸かった。
「っく、フゥゥぅぅ〜」
「染みる?」
「流石にな」
「飲んで。内臓も傷ついてる」
東条はノエルの両手から回復薬を直飲みし、一息吐く。
そしてみるみる閉じてゆく傷口に、紗命と灰音の2人も驚いた。
「……すっご」
「便利やなぁ」
「マサもノエルの細胞取り込んで再生力上がったけど、やっぱりノエル程じゃない。半分人間。過剰に傷つくのはダメ」
「分かってるよ」
東条は隣でジーと見つめてくるノエルに微笑み、その純白の髪を撫でる。
柔らかくて、しっとりとしていて、まるで絹の様だ。
……一定のリズムで水面を叩く水滴が、耳を癒す。
……優しく包むぬるま湯が、身体を癒す。
……仄かに甘い花の香りが、心を癒す。
……パシャ、パシャ、という水面が揺れる音に、東条が瞑っていた目を開くと、
「……ノエルばっかりじゃないか」
正面から首に腕を回され、太腿が柔らかな重みを受け止めた。
彼の上に横向きで寝そべった灰音は、その赤い瞳の奥を覗き込み、悪戯っぽく微笑む。
「僕は邪魔かな?」
「……そう思うか?」
「ふふっ、……思わないかな」
視線を少しだけ下ろした灰音は、ニヤリと笑い、東条を抱き寄せ唇を奪い、舌を絡める。
蛇の様に這う甘さに脳が痺れ、東条の心拍が更に速さを増す。
「っはぁ……はぁ……、あははっ」
唇と唇を繋ぐテラついた赤い糸が、彼女の舌に舐め取られた。
「……ねぇ黄戸菊ー、いつまでそんなとこで恥ずかしがってんのさ?」
「っ、べ、別に」
紗命は薄く染まった頬を隠すように、2人から目を逸らす。
その朱みが湯温の所為ではないことくらい、誰の目にも明らかだというのに。
「紗命、」
「……ふぅぅ」
東条に呼ばれた紗命は、1度小さく深呼吸し、胸を隠しながら前へと進む。
「……おおきに、ノエル」
「……ん」
ポ〜、と顔を朱らめるノエルが、そそくさと紗命に左隣を譲った。
紗命は傷だらけの胸板にそっと頬を乗せ、大きく息を吐く。
「……懐かしいわぁ」
……甘く、蕩け切った横顔。
……熱く、湿った吐息。
東条はそんな彼女のツヤを帯びた綺麗な黒髪を撫でながら、クスリと笑う。
「クックっ、紗命よぉ、お前そんな初心だったか?」
「はぁ?久しぶりやったから、少し緊張しただけですぅ」
「ねー。胸なんか隠しちゃってさ、」
不思議がる灰音を見た紗命は、羞恥と悔しさに目を逸らす。
「……っ黒百合のみたいに、その、……おっきくないし」
「へ?」
「っ一緒に脱ぐと余計際立つやろっ、もぅ、言わせんといてやっ」
胸に顔を押し付けてる彼女の可愛さに、東条は灰音と顔を見合わせ笑う。
「お前なぁ、気にするなって。俺は紗命のおっぱい好きだぞ?」
「ぉ、おっぱいとか、その呼び方やめぇっ」
「そうだぞ〜?別に大きければ良いってもんでもないでしょーに。黄戸菊Dくらいあるでしょ?十分じゃない?」
「……もうちょっと欲しいもん」
「よし分かった!じゃあお姉さんが大きくしてやるっ、ほら手退けな!」
「なっ、やめぇやバカ⁉︎ちょぃっ」
揉み合う彼女達を両脇に、東条は満足げに天井を仰ぐ。
両手に花とは、こういうことを言うのだろう。
「ひゃっ⁉︎っ、」
「ぁんっ……ちょっとぉ、んっ」
紗命と灰音の身体が少しだけ跳ねた。
東条はニヤリと笑いながら、左手で丁度いい、右手で溢れそうな感触を堪能する。
マシュマロの様に柔らかくあって、それなのに指を押し返してくる弾力と張り。
……完璧。完璧意外にこの至高を形容する言葉が無い。
「天国だぁ〜〜」
「っそろそろ、ねっぇ、っッ」
「んんっ……あはは、エッチだねぇ相変わらっ、ずぅっ」
2人の身体がビクンっ、と1度強張った後、東条は両手の親指と人差し指から力を抜き……ソレを離した。
「なぁ紗命、灰音、」
「な、なに?……っはぁ……はぁ、」
「ん〜?ふふっ」
「……お前達はドが付く程の美人で、ファンも多い。さっき紅さんに聞いたけど、巷にゃ紗命のファンクラブなんてもんも出来たって」
「ぁあー、あったなぁそんなん。鬱陶しい……」
「灰音は言わずもがな、現役バリバリのアイドルだった。今日終わったけど」
「あはは〜……」
東条は目を瞑り、
「……本当はこんなこと言っちゃぁ、いけねぇんだろうがよぉ……」
「んふふ、なになに?」
「何よ?」
1度大きく息を吸い、吐いた。
「……日本の何千何万の男共が、見ることしか叶わねぇ。
一方通行な感情を向けて、勝手にガチ恋して、それでも画面に向かってシコることしか出来ねぇ。
そんな女を、俺だけが好きに出来る。
……この状況に、俺は堪らなく興奮している」
「……ふふっ」
「……ぅわぁ、もうエロ漫画の悪役じゃん。フフっ」
その男の顔に張り付く笑顔に、2人は自身の下腹部が疼くのを感じた。
奪い、従わせる、男の持つ根源的独占欲。まるで獣だ、圧倒的捕食者の笑みだ。
自分達など抵抗すら許されない、この人の前では、ただ喰われるのを待つだけの、望むだけの、
……1匹のメスに成り下がってしまう。
「っ桐将、もうえぇやろ?なぁ」
「フフっ、桐将君ももう我慢の限界じゃない?ほら、ここだってこんなに、こんな……え?」
そこで灰音が手に持つ違和感に振り向く。これは、これ、え?何これ⁉︎
「……っやっば。鉄パイプくらい硬いよこれ。なんか脈打ってるし……」
「……そうか、性欲の吐口がうちらしかないから、こういう時に溜まったモンが全部出てくるんや」
「……それ、僕達大丈夫?」
「……」
恐る恐る東条の顔を見る紗命と灰音。
「――ハァッハァッハァッハァッっ」
「き、桐将?」
「桐将君、大丈」
瞬間、ギョロリと蛇眼が2人を捉えた。
「きゃっ⁉︎」「わっ」
「っすまねぇ2人共、もうッ無理だ」
2人を抱えたままバシャバシャと風呂から上がった東条は、そのままキングサイズのベッドに2人を投げる。
「わ、え、っ」
覆いかぶさり紗命の両手首を押さえ付け、口で袋を破り、片手でゴムをつける。
「……フシュゥゥ……フシュゥルルルルッ」
心臓が熱い!心臓が熱い!心臓が熱いッ‼︎
紗命はそんな苦しそうな獣に微笑み、
「……しゃぁない人やなぁ、もぅ」
そっと抱き寄せた。
「ええよ、おいでぇッん⁉︎そんっんぁっ⁉︎いきなりっはげしっ、ちょっ⁉︎ノエっルがっ見とるっ、てばぁ⁉︎」
「ねー何で黄戸菊からなのさ〜僕は〜?ねーねッぇん⁉︎んァッアハハッんん⁉︎」
――部屋に響き渡る嬌声と、乾いたリズム音。
「……ぁわわ」
両手で目を覆ったノエルは、指の隙間からその光景を凝視していた。
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