第20話


 ――ハワイはオアフ島、ホノルル。


 日本人がハワイと聞いたらまず最初に思い浮かべるであろう、ワイキキビーチに沿ってズラリと並んだホテル群。


 隣接するカラカウア通りには1流ホテルから高級ブランド店、多くの飲食店が立ち並び、朝から晩まで人が行き交い賑わっている。


 数個の巨大ショッピングモールに、幾つもの名所を持っているこの地は、まさに夢の島。


 今でこそアメリカ国内に限定されるが、それでも観光地として賑わっている、


 そんなワイキキビーチに、……本日、一艘の筏が漂着した。



「……What the hell is that?」「Raft, isn't it? 作ったのかしら?」「Wait,何だあの痴女は⁉︎」「スゲェ美人だな」「いや何でガキにあんな格好させてんだよ⁉︎」「隣の男、どんな身体してんだよ……」「ヤッバ」「うわ、私超タイプかも」「傷だらけだし、ハンターか?」「あの男の、あれ水着なのか?何かモヤモヤしてるぞ?」「何だあいつら」「Japaneseじゃないか?」「日本人のハンターなんかいたか?」「日本人にゃロリコンが多いって聞くが、」


 ビーチで遊んでいた老若男女が、例外なくその場違いな物体+αに目を向ける。


 まあまあの注目を集めながら、東条とノエルは筏から降りた。


「……結構目立っちまったな」


「ん。何でだろ」


「お前のせいだよ痴女ガキ」


「いやん」


 葉っぱを3枚くっつけただけの肢体を扇情的に押さえるノエル、


 を無視して東条は近くの若者に笑顔で近づく。


「ヘ〜イブロ!ハウアーユー?」


「な、何だよ?」


「ハウ、アー、ユー?」


「困惑してるよ」


「グッド?ユーグッド⁉︎ミーテュー、イェア〜」


「(酔ってんのか?)」


 勢いでグータッチをし、若者と肩を組む東条。

 アメリカ人はこれで友達になれると本に書いてあったのだ。良い出だしだ。


 絡まれたらヤバそうだと判断した他の者達が、2人の周りからそそくさと去ってゆく。


 東条は逃げたそうにしている若者を腕で絞め、人差し指を立てた。


「クエッション!オーケー?」


「あ、ああ」


「ディスエリアズフェイバリットレストラン、プリーズ!」


「ん?あぁ何だ、レストラン聞きたかったのかよ。ビビったじゃねぇか」


「アーハンアーハン」


 東条はとりあえず相槌を打ちまくる。

 何を言ってるのかは分からないが、伝えたいことは伝わったらしい。流石俺だぜ。


「何食いたいんだ?」


「hamburger!!」


「Oh,痴女の嬢ちゃんはこう言ってるけど?」


「……I'm not a bitch」


「アーハンアーハン」


「(2人とも酔ってんのか。……さっさと離れよう)OK,この近くだったらEddy's Ilegger Burgerってハンバーガーショップがオススメだよ。検索したらすぐ出ると思うぜ」


「I don't have a phone. 道教えて」


「Ha!?マジかよ?なぁ兄ちゃん、酒買う金あんならこの子に携帯買ってやれよ?」


「hahaha、サンキュー!」


「……Hey, girl、コイツはもう手遅れだ。悪いことは言わねぇ、離れた方がいいぞ?」


「way」


「……huh、ここをこう行って、ああ行って、そこを右で、こうだ」


「Thank you」


 ノエルが歩き出すのを見て、東条も彼に手を振る。


「おお、サンキュー!ハヴァナイスデイ!」


「……You too.(……悪い奴らじゃなさそうなんだけどなぁ)……」


 若者は手を振りながら、今後が不安な2人の背中を見送った。

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