第14話



 とある街中のオシャレなカフェでは、乙女3人が女子会に花を咲かせていた。


「ここのケーキ美味いっす」


 猫目がミルフィーユをパクパクと口に運ぶ。


「でしょ?この前見つけたんだ〜」


 そんな彼女を見ながら、風代がショートケーキに舌鼓を打つ。


「風代はカフェに詳しいな」


 モンブランをチビチビ食べながら、紫苑が感心した。


「趣味なんだ。カフェ巡り」


「今どきのJKっす〜」


「あんたもやろ」


 紫苑の鋭いツッコミに2人が笑う。


「でも紫苑さんだって年齢的はJKでしょ?」


「まぁ、せやな。……2人は進路どないするん?」


 栗をパク、と食べた紫苑に、ジト〜とした目が向けられる。


「……な、何や」


「紫苑いじわるっす」


「こんな時まで進路の話しないでよぉ」


「どうせ決めなあかんやろ。もう夏やで」


「うへ〜、先生みたいなこと言うなっす」


 猫目が頭を抱え悶える。


「猫目はまぁせやろうけど、風代はそんな成績も悪くあらへんやろ?」


「おい」


「大学で迷っとるん?」


「迷ってるってわけじゃないんだけど、一応◯◯大学目指そうかなって」


「あ、それって朧さんの?都内1なんやろ?やっぱ凄いなあんた」


「ウチもそこ行くっす!」


「まぁ、目指すだけなら誰でも出来るから」


「それでも凄いよ」


「おい無視するなっす!」


「あ!ちょっと⁉︎」


 怒った猫目がショートケーキのイチゴをフォークで刺し口に放り込む。

 頑なにモグモグするほっぺたを、風代がべチンべチンと叩く。


「吐きなさい猫目ちゃん!吐きなさい!こら!」


「紫苑ふぁ大ぎゃく行くぎないっずか?」


「んー、今のところは無いかな。十分調査員で稼げてるし」


 紫苑はコーヒーで口直しをし、腰のホルダーに差さったナイフを撫でる。


「はぁ、はぁ、……そういえばこの前1級合格したんだよね?おめでとう」


「マジすか!おめっす!」


「ふふ、おおきに。……でも、ちょっと迷っててね」


「ん?大学」


「うん。紗命が行きそうやねんな。今はあのゴリラ追って新大陸やけど、何年後かに」


「紗命がっすか?」


「何か学びたいことあるのかな?」


「何か経営学学びたいらしい」


「ふ〜ん」「凄いっすね〜」


 とそこで、カフェの入口が開き綺麗な大人の女性が入店する。キョロキョロする彼女に気付いた猫目が手を振る。


「あ、佐世ねえ!こっちこっち」


「氷室さんお久しぶりです!」


「久しぶり、氷室」


「わ〜皆久しぶり〜っ」


 キャッキャとはしゃぐ大人の美女のギャップが、周りの男の目線を吸い寄せる。


「猫ちゃんに涼音ちゃんに紫苑ちゃん、皆可愛くなっちゃって〜っ」


「そんな変わってないっす」


「氷室も綺麗だよ」


「もうっ、紫苑ちゃん大好き」


 氷室は店員を呼び、フルーツタルトとドリンクを頼む。


「それでそれで?何の話してたの?恋バナ?」


「これからの進路についてちょっと」


「あら、思ったより真面目な話」


「紫苑さんが。ねー」

「ねー」


「……」


 そっぽを向く紫苑。


「そういえば氷室さんはどうするんですか?軍辞めたんですよね?」


「うん。あの2人を傷つける部隊になんか居たくないからね〜」


「就活中っすか?」


「それがこの前藜さんから声かけてもらってね。彼の下の治安維持部隊に入ると思う」


「へ〜おめっす」


「ありがと〜」


 髪を耳にかけケーキを食べる氷室が、紫苑に目を向ける。


「それで、紫苑ちゃんにちょっと聞きたいことがあるんだけど」


「ん?なに?」


「紫苑ちゃんのご家族、ご両家とも大丈夫?ほら、あんなことがあったでしょ?ずっと心配で」


「あーあれはウチも流石にビビったっす」


「私も、あんな怖いマサさん初めて見ました」


 紫苑がコーヒーを置く。


「うん、確かに当時はうちの両親も、アイツのパパさんもママさんも相当ショックを受けてたけど、今は何ともないよ。寧ろ元気」


「良かった〜。やっぱりこれも東条様のカリスマの成せる業よね〜」


「今じゃあの時の批判が嘘みたいっすもんね。国民掌クルックルっす」


「そういえばハイネさんがデビューしたのもあの頃だよね。勢い凄かったからよく覚えてる」


「……せやね。ま、これでええとは思うよ」


 紫苑は窓の外のハイネが映った電光掲示板を眺める。


「よーし、じゃあ皆が元気なことも分かったし、恋バナしよ!」


「佐世ねえ見ないうちに精神年齢下がってないっすか?」


「酷い⁉︎」


「うちはパス」


「私も今は何もないかな〜。受験期だし」


「弱い男に興味はないっす」


「君達本当に年頃の女の子⁉︎」


「「「失礼な」」」

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