Merry Christmas

 





 ――空はどうして青いのか。



 ――海はどうして揺れるのか。



 ――なぜ日は昇るのか。



 ――なぜ月は斯くも美しいのか。



 ――なぜ花は散るのか。



 ――なぜ人は生きるのか。




 ――なぜ、人は愛すのか。




 生活の1部に溶け込んでしまった、何気ない瞬間。



 それが当然のことであると認識し、受け入れてしまう。




 ――雪。




 本当は、その何気ない瞬間が、1番大切なものなんじゃないだろうか?




 ――雪が舞う。




 誰もが触れたことがあって、誰も気づかないような、そんな瞬間が。




 ――雪が、舞う。




 ……1番近くにいたのは、



 ……いつも寄り添っていたのは、



 ……隣で笑っていたのは、




 ……生意気で、傲慢で、自分勝手で、礼儀とか知らないし、人をちょっと頭の良い猿くらいにしか思ってないし、口に物入れたまま喋るし、風呂入った後身体拭かないし、テレビ勝手に変えるし、チビだし、ロリだし、2次元から出てきたんかってくらい可愛いし、なんだかんだ頼りになるし、人のことよく見てるし、優しいし、面倒見いいし、助けてくれるし、


 ……ずっと、傍にいてくれた。




 ――ひらひらと、ゆらゆらと。





 なぜだろう。空一面の水玉模様が、歪んで見えるのだ。





 ――「マサッ、どこっやだっやだ!行かないで!」


 泣きながら穴から這い出てきたノエルは、


 しかし、……しんしん降る雪の中、1人佇む男を見て固まる。


 男は隠すように目頭を拭い、振り向いた。




「…………おかえり、ノエル。……ようやく言えたわ」




「――ッっっっ」

「っとと」


 胸に飛び込んできたノエルを抱きしめ、男は、東条は微笑む。


「――ッぅああああっ、ひぐぅッ、っぅうああああああんッッ」


「ありがとうなノエル。今日までありがとう。よく頑張った。よく頑張ったな」


 東条はノエルを強く抱きしめ、ボサボサの髪を撫でる。

 ポタポタと落ちる雫を隠すように、彼女の頭におでこをくっつけ、強く、強く。


 どれだけ不安だったか、

 どれだけ怖かったか、

 どれだけ心細かったか、


「もう大丈夫だ。もう大丈夫」


 東条は今日まで彼女が話しかけてくれた、1つ1つの言葉に返事するように、強く抱きしめた。




 ――音もなく、ひらりひらりと舞う雪の花。





 サンタクロースは、いるのかもしれない。



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