集合
「?どういう」
「俺もお前も、次が最後だ。あの骨は消し飛ばしても復活するチート持ち。一か八かだが、効きそうな技が1つだけある」
「……ゼノ殺ったやつ」
「そうだ。動き止めた瞬間全力で逃げるぞ。お前が頼みだ、道は俺が作る」
「ん、……ん!」
瞬間、無理矢理口角を上げた東条が地を蹴り、ノエルが両手に剣を生み出し、同時に飛び出した。
「――ッッフゥ」
東条は両足に『雷装』を、残った右腕に『火装』を纏い、骨刃を砕き飛ばし超加速。
「――ッ待っててくれて有難うヨッ‼︎」
「Do
「日本語プリーズッッ‼︎」
アッパーで顎をかち上げ脇腹に回し蹴り、地面から生える骨刃をバックステップで躱す、
と同時にスイッチしたノエルが通り抜けざまに振り下ろされる骨剣を左の樹剣で弾き、右の土刀を一閃、腕の1本に傷をつけ骨剣を弾き飛ばす、
宙を舞う骨剣を東条が蹴り抜きカロンの山羊面にブッ刺す、
がその足を掴んだカロンが東条を地面に叩きつけ、
る直前ノエルが膝裏を狙い一閃、がしかし背面の鹿頭に見られていたため防がれる。
加速、カロンは東条を叩き下ろし、爆音、背中の漆黒を吹き飛ばすと同時に骨刃を生やし脇腹を貫いた。
「ッッ野郎ッ」
東条は激痛に唸る。
しっかりと漆黒を消した上で攻撃してきやがった。能力の特性を完全に見抜かれている。
腹を貫通する骨刃を叩き折り掴み、上体を起こし自分の足を掴む腕にブッ刺し抜け出す、
東条に向けてカロンが剣を振り下ろす、
直前割り込んだノエルが弾く、
も残りの剣がノエルに振り抜かれる、
瞬間東条が足を刈り剣線をズラす。半回転、
「ッカッはっ」「ッゥぐっ」「ッァカっ」
――東条の回し蹴り、ノエルの斬り上げ、カロンが2人に放ったボディブローが同時に炸裂、
3者同時に吹っ飛んだ。
ここで距離を取られたら終わる!東条とノエルは強引にブレーキをかけ、再度突撃、
「ッっっ」「マサっ‼︎」
しようとするが、『雷装』を酷使しすぎた結果か、大雨にぬかるんだ地面に足を取られ、一瞬だけ東条の体勢がブレた。
張り詰めた戦場で
そしてその隙を見逃す程、敵も馬鹿ではない。
――焦る東条の身体から冷や汗が吹き出る、
――ノエルが東条に向け全力で駆けようとする、
――よりも速くカロンが魔力を練り終わる、
――死ぬ
いつ以来か、東条の心にその2文字が走った。
――その時だった。
「「――何してんだっ、お前――ッ‼︎‼︎」」
「⁉︎」「⁉︎」「っ……コココ、」
天から降って来た灰音と紗命の踵落としがカロンを押し潰し、大地を波状に吹き飛ばした。
数分前、東条のバイタルを敏感に感じ取った2人。
今しがた戦闘を終えたにも関わらず、そこからの彼女達の行動には、一切の乱れも遅れも有りはしなかった。
灰音は紅の静止を振り払いドラゴンに飛び乗り、
紗命は煩いイヤカムを外し大波を操り、
局所的な雨が降る島へと突っ込んだのだ。
……そうして彼女達の目に映ったのは、片腕が無くなり血だらけになった想い人の姿。
その瞬間、灰音と紗命の脳裏から理性が消えた。
「殺すッ‼︎」
「去ねや、」
踵落としを受け止めたカロンの頭部を、灰音が殴り上げ罅を入れる。
持ち上がった首目掛け、紗命が劇毒の杭を打ち込んだ。
「チッ、仕留めてくんないかなァ!」
「ほざけ、あんさんの拳の方が使い物にならんやろ!腕切りっ」
吹っ飛んだカロンに、紗命と灰音が苦い顔をする。
それも当然か、殴った灰音の拳はカロンのあまりの硬さに血を吹き、紗命の攻撃は外骨格を貫通できずカロンを押し飛ばしただけ。
無駄な一撃、無謀な行為、
――だがその行動こそが、負の流れを止めた。
一瞬の空白。
生じた逆転の隙。
その好機を逃す東条ではない。
今!今だ‼︎今今今‼︎漆黒で傷を塞ぎ、獰猛に頬を歪め一気に飛び出した。
「ッッ畳み掛けろお前らァアッ‼︎」
「ッ‼︎」「「――ッ」」
雷鳴を轟かせる東条に3人も追従する。
灰音も紗命も無駄な質問などしない。最強と疑っていなかった自分の恋人が、これ程の重傷を負っているのだ。下手な問答など不要。
ただ目の前の背中を追い、預ければ良い。
東条は笑う。背後に感じる頼もしさに、心の底から笑う。
正真正銘、これが最後。後のことなど考えるな。身体など壊れてもいい。
今、この瞬間に、ありったけをぶち込め。
「ッッッッッッッ」
最高密度の『雷装』に血管が弾け、筋繊維が千切れる。
灼熱の『火装』に腕の皮膚が全て剥がれ、痛覚が消える。
東条は地を蹴る。地を駆る。地を翔る。
――瞬く雷光が音の壁を破り、踏んだ大地を根こそぎ吹き飛ばし、果ては1本の線と化す。
立ち上がったカロンは遅れて気付く。
「……――ッ⁉︎」
自分の身体が、途轍もない速度で蹴り飛ばされていたことに。
――ぶっ飛び顔面で地面を削るカロンを、超加速したノエルがカチ上げ
――瞬間東条が殴り落とし頭部を溶解、全損させ、地面を爆砕
――何が起きたか分からずも立ちあがろうとする首無しカロンに、灰音と紗命が縮地
「ぅラァッッ‼︎」「フゥウッッ‼︎」
――全力で蹴りを入れ、自身の足が壊れるのも厭わずカロンの膝を逆側に叩き折る
――が膝をついたカロンの頭部が修復
――する直前雷光が通過、灰音と紗命を風圧で吹き飛ばしながら、再度カロンの頭部を雷撃で粉微塵にする
――転がりながら紗命が傷口から毒を送り込み再生を遅らせる
――と同時に最後の魔力で無くなった腕と大剣を造り跳躍していた巨神が、自重と重力を加え大剣を地面に突き立てる。
島に地割れを起こし、カロンの6本の腕を強引にへし折り潰し切り飛ばした。
――首、腕、足の全てが消えたカロンが地面に倒れる
――瞬間東条が片腕を振り上げ、
「『灰顎門ッッ‼︎』」
その胸部に5指を突き立てた。
メキメキメキッッと指がへし折れる音を聞きながら、
「――ッラァッッッ‼︎‼︎」
しかし強引に貫通、
「ノエルッッ」
「ッ」
――スイッチ。ノエルがその穴に手を突っ込み、内部の肉壁に種を1つ植え付けた。
一瞬で再生を始めるカロンが、4人に掌を向けた、
……その時、
「?」
カロンの胸部を破り、ピョコ、と小さな芽が顔を出す。
「ォ、オ、ォギョギョギョギョ⁉︎⁉︎」
瞬間胸部外骨格をめちゃくちゃに食い破り、加速度的に成長してゆく樹木。
肉を、骨を、血を、魔力を苗床に無限に成長する死の種子が、カロンの体内を蹂躙した。
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