2

 


 スラリと引き抜かれる長剣が、陽光を反射し白金に輝く。


 その刃こぼれ1つ無い刀身の美しさに、2人はこの騎士が並の剣士ではないと悟った。


 引き締まる静寂の中、



「uuuu……」

 騎士は長剣を胴体と一直線に、正眼の構え。


「フゥゥぅ……」

 斉藤は黒刀を顔の横まで持ち上げ切っ先を相手に向ける、霞の構え。


「……」

 土方は鯉口を親指で弾き柄を握る直前で停止、居合・抜刀の構え。



 ――生臭い風に乗り、揺らめく木の葉が血溜まりに落ちた。



「「――ッ」」


 瞬間2人が同時に地を蹴り飛び出す。


 斉藤は上段からの袈裟斬りを弾かれるも即柄を持ち変え、横一線に振り抜き、弾かれ、


 しかし空いた脇腹に土方が潜り込み、――抜刀、逆袈裟、


「っ」


 を騎士はガントレットで弾き、長剣を地面に突き立て膝を狙う一撃を防御、地面ごと抉り万力で長剣を振り上げ、


 る途中で斉藤が刀身で長剣の腹を押していなし、そのまま滑らせ切り上げ、


 を騎士は手首のスナップだけで弾き飛ばす、


 横から土方が抜刀、目にも止まらぬ速度でふくらはぎと肘に傷を刻み、刀を引き刺突、


 を騎士は首を逸らして躱し切り上げ、

 いなされ同時に迫る横薙ぎを、長剣を両手で掴み頭部を1周させ弾き飛ばし、

 そのまま遠心力を乗せ振り下ろした。


「ぶねッ⁉︎」


 全力で身体を逸らした斉藤のタバコが眼前で切り飛ぶ。


 地面が砕け散り粉塵が上がった、


「――ッシ」


 中を土方が縮地からの抜刀、抜き付け一閃、振り上げ切り下ろし、逆袈裟、横一閃、その間0コンマ数秒。まさに疾風の如き連斬り、


「ックソ」


 はしかしその全てが、騎士の圧倒的な剣技の前に弾かれた。

 これがモンスターだと?冗談も大概にしてくれ!


「スイッチ‼︎」


 土方は後方からの声に合わせ横に跳躍。


 影から現れた斉藤が長剣の切っ先に刀身を重ね、相方を追う斬撃を斜め上に逸らし、肘関節目掛け一閃。


 同時に土方が抜刀、逆肘関節に一閃。


 完璧な同時攻撃は、


「Huuu!」

「「――ッ⁉︎」」


 しかし途端魔力が膨れ上がった騎士の一閃によって、身体ごと吹き飛ばされてしまった。

 直後、2人の後ろの建物が真っ二つにズレ落ちる。


 ……再び開いた間合い。


 斉藤が汚れたタバコを吐き捨て、笑う。


「硬ぇし速ぇし、ふざけんなよたくっ。絶対俺らが相手していいレベルじゃねぇって」


 土方が崩れた髪を直し、メガネを上げる。


「……あれ、使いましょう」


「……動けなくなるぜ?」


「死ぬよりはマシでしょう」


「間違いないわ」


 静かに、しかし圧倒的な魔力を滾らせる目の前の騎士は、半端して切り抜けられるような壁ではない。


 これが、正念場というやつなのだろう。


 気配の変わった2人に、長剣の切っ先がピクリと反応した。



 2人は刀身に触れ、その『名』を呼ぶ。



「起きろ『天鼓てんこ』」


「起きろ『黒南風くろはえ』」



 同時に2人の魔力が凄まじい速度で刀に流れ出す。


 そして次の瞬間、


 斉藤の持つ『天鼓』の刀身には黄色の、

 土方の持つ『黒南風』の刀身には薄緑色の、

 罅の様な模様が広がり発光を始めた。


 これこそが、今の科学に於ける最高到達点。


 現代式魔法武装。


 新分野、魔法科学の結晶である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る