雷鳴轟く青嵐 1

 


 2振の黒刀が滴る血を切り、2本のタバコが紫煙を燻らせる。


 新調した戦闘用タクティカルスーツと革靴が、場違いな程に似合う2人。


 スーツを着崩した斉藤は、大きく息を吐きモンスターの死体を眺める。


「だはぁあ、どいつもこいつもタフだな」


「新大陸から来た奴らですからね。こんなの雑兵も雑兵でしょう」


 一切崩れないオールバックと、細い銀縁のメガネが土方のトレードマーク。

 彼は黒刀を鞘に納め、特殊部位が無いかモンスターの死体を漁る。


 そんな土方を見て呆れる斉藤。


「お前、ブレねぇなぁ」


「調査員の報酬は歩合制です。ただでさえ新装備揃えて今月ピンチなのに、休んでる暇なんてないでしょう?」


「今金の話すんなよぉ。ほら、もっと人助けしようぜ?」


「人は助けます。でも人を助けても家賃は払えません。ほら、先輩も手伝って」


 反論出来なくなった斉藤も刀を肩に担ぎ、ボーナスを探して周囲を回る。


「ねぇなぁ、やっぱ雑魚なんだな。毛皮とか剥いで持ってくか?」


「この戦いが終わった後に大荷物持ってたら、周囲から総バッシング食らいますよ。撃破数は端末に記録してますし、臨時ボーナスは片手に収まる程度にしましょう」


「……うわ〜、」


 斉藤は相方の抜け目のなさをちょっとどうかとも思いながら、残念そうに立ち上がる土方をジト目で見る。


「ありませんね。次行きましょうか」


「うし、どこ行くよ?この区画は?」


「そこは紫苑さんから達成の報告が入っています。軍からの連絡も混線してますし、俺達は逆に行きましょう」


「了〜解」


 次なる人助けとボーナスのために目的地を決めた、


 ……その時だった。


「「――ッ……」」


 2人は表情を変え、一瞬で臨戦態勢に入る。


 柄に手を添える土方が、苦い顔をしながら物陰を睨みつける。


「……逃げますか?」


「……いや、無理だな(野郎、気配消してやがったのか)……仁、応援呼べ」


「もう呼びました」


「流石、だ……何だぁありゃあ?」


 軽口を交わす斉藤は、次いで固まり、目を丸くする。


 物陰から現れたそれは、あまりにも時代錯誤な形をしていた。



「……Huuuuuu~~」



 所々朽ちた西洋のフルプレートメイル。

 腰に差さる1本の長剣。

 そして極め付けに、首から上が無いときた。


 あれもモンスターなのか?どっから声出てんだ?


 2人の頬を冷や汗が垂れる。


 ……何はともあれ、ただ1つ言えることは。


「……おら仁、ボーナスだ」


「……チッ」



 圧倒的、格上。


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