15話



「……」「……」


「そないな怖い顔しいひんでやぁ。元はと言えば、あおはんが助ける言うて飛び出したのが悪いんやでぇ?」


「……それは、済まなかった」


 プンスカと頬を膨らませる紗命に、葵獅は罰が悪そうに頭を下げる。

 とそこへ凛も青筋を浮かべ歩いて来る。


「本当よ!皆葵みたいにタフじゃないんだから!ちょっとは後先考えな!」


「……すまん」


「まったくもうっ」


 怒る女性陣に、血濡れた槍を肩に掛けた若葉が笑う。


「ほっほっ、まぁまぁ、人助けは悪いことではないし、そこらへんで」


「黙ってなこの戦闘狂!」


「……」「……」


 男衆2人がシュン、となる。


 周りでは人間達が死んだオーガをよっせよっせと何処かへ運んでゆく。


 突然の助っ人と場違いに明るい会話に、紅と部下6人は口を挟めないでいた。


「……すまない。そろそろ良いかい?」


 躊躇いがちに声を掛けた紅に、周りの目が向く。


「ああ、すまない。とりあえず村に案内する。話はそこでしよう。凛、彼女を、」


「分かってる」


(村?)


 そう言い歩き出す葵獅の横から、凛が片腕を食われた彼女に駆け寄る。


「……酷いね。歩けるかい?」


「は、はい、問題ないです」


「すぐに希海に診てもらわないと。乗りな」


「い、いやっ、大丈夫です。歩けますから」


 背中を向ける凛に、恥ずかしそうに首を振る彼女。そんな彼女に紅が優しく微笑む。


「甘えさせてもらいな。お前がいなくなるのは私も困るからな」


「っ……はい」


「ふふっ、良い上司を持ったね」


 彼女を背負い、凛が駆けて行く。


「……俺達も行こう。そろそろ血の匂いに釣られてモンスターが湧いて来る」


「……分かった」


 紅は5人を連れ、続いてニコニコと笑う紗命をチラリと見る。


「はぁい。ほら源はん、いつまで落ち込んでるん?」


「……ほっほ」


 紅は目を逸らし、薄く笑う。


 会って分かった。こいつは真狐に聞いていたよりも数段ヤバい。

 マサの記憶の中ではここまでの力は持っていなかった筈。彼氏と離れ離れになって覚醒したか?能力は?効果範囲は?効果条件は?私の電磁バリアが作動したことを考えるに、空気中に何かある?恐らく私以外の部下は既に奴の術中。……そういえばこいつ水魔法の使い手



「……うちの背中になんか付いてる?」



「……いいや、綺麗な髪だと思ってな」


 上目遣いで覗き込む彼女に、紅は微笑む。


「ふふふ、おおきに。あなたの髪もとっても綺麗やよぉ」


「有難う」


「ふふふ、仲良うしようなぁ?」


「ああ、勿論だ」


 彼らに案内され、紅達一行は森の中へと進んで行くのだった。

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