12話 

 

 ――白い帽子を被った赤煉瓦倉庫。

 北海道でも名のある観光名所だったこの場所も、今となっては見る影もない。


 寂れた風が瓦礫に吹き付ける中、紅は静かにソリから足を下ろす。


「……」


 彼女が指を上げると同時に、部下の6人は戦闘陣形に移った。


「……多いな」


 彼女が呟いた。


 瞬間、――建物の中、瓦礫の隙間、屋根の上、四方八方から矢が射られた。


 6人は各々が武器を抜き、危なげなく全ての矢を弾き落とす。


 紅が瓦礫の一角に雷撃を撃ち込み、破砕。そこから出てきたのは、


「ッグル⁉︎」


「何だアレは?人か?」


 青黒い体表。剥き出しの牙。頭の上に立つ1本の角。弓を持った人型の何かが、衝撃に吹っ飛ばされ宙を舞った。


 それに合わせ続々と出てくるお仲間さん方。手に持つ武器は多種多様、その数、目算でも50は下らない。


「……姉御、こりゃあ大変だ」


 想像以上の数に6人の魔力に力が入る。


 未発見のモンスター。名をつけるとするなら、


「……オーガ。人喰いの鬼かね」


「グルォォアアッ‼︎」


 突撃してくる鬼の軍団に、紅は気だるげにタバコを吐き捨てた。



 久しぶりの人間に、オーガ達もテンションが上がっていた。

 数は少ないが、適度に肉の付いた女も数匹いる。これはご馳走だ。

 何の問題も無く狩りを終え、宴を開く、……筈だったのだ。



 ――「ギギャァ⁉︎」「ボォえ⁉︎」「ゴッ⁉︎」「ギャッ⁉︎」


 炎が地面を這い、辺りの雪を気化させながら逃げるオーガを火だるまにする。


 放たれた矢が風で向きを変え、加速し威力を増してしてオーガに降り注ぐ。


 土のガントレットがオーガの腹を陥没させ、首を直角にへし折る。


 水の塊がオーガの首から上に纏わり付き、窒息させてゆく。


 人型ならば弱点も人間と似ているはず。高い身体能力を誇るオーガ達を、それ以上の身体強化で殺し回る6人。


 そんな予定外の強さを誇る人間達の中でも、一際ヤバいのが1人。


 空気を走る電撃が全ての攻撃を防ぎ、降り注ぐ雷撃が次々と命を散らしてゆく。

 歩くだけで数匹を炭化させる彼女には、最早1匹も近づこうとしない。


 1匹1匹の強さはホブゴブリン程度。これなら案外すぐ終わるな。そうタバコに火をつけた紅は、


「……む、」


 しかしその時、電磁バリアに放たれた強力な雷撃に顔を顰めた。


 火花が散る中、新たに続々と湧いてくる魔力反応に舌打ちする。


 そして眼前には、雷撃を放ったであろう、オーガを2回り程デカくし更に顔面を凶悪にした個体。


「……上位種か」


「ゴロロロロ」


 同時に後退してきた康が、抱えていた1人の部下を地面に下ろす。他4人も紅の周りに集まり呼吸を整える。


「姉御っ、上位種は2体です」


「っ……申し訳ありません紅様、」


 汗を滲ませ謝る彼女の右腕は、肩から先が無くなっていた。


 部下の腕を食いながら現れるもう1体のハイオーガ。感知からして、各々がLv 6を超える絶対強者。流石に部下には荷が重いか。加えて援軍で倍になった雑魚の群れ。


 これはすなわち、ピンチというやつだ。


「いい。まだ動けるか?」


「っ勿論です」


「私はあの2匹を相手する。殺した瞬間撤退だ。その間雑魚を近づけさせるな」


「「「「「「了解」」」」」」








後書き

更新遅れてすまん。電撃文庫大賞落ちてbad入ってる。ちょっと更新ペース遅くなる。筆乗らん。

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