11話



 ――数個の町を通過した一行は、陽が落ちるのに合わせ、ボロボロのホテルで休むことにした。


 天井には大穴がいくつも空き、室内も荒れに荒れている。


 爆撃でもされたのか、通ってきた町全てが同じ様相であった。

 当然人には会っていない。


 紅は部下に魔法で火をつけさせ、適当に暖をとる。


「……モンスターの影響でしょうか?」


「……さぁな」


「姉御!缶詰見つけやした!」


「珍しいな。雪のおかげか」


「なら尚更、人がいてもおかしくないのでは?」


「まぁ、その内分かるだろ。今は休んどけ」


「「「はい」」」



 ――そうして目を瞑って、


 数時間後、


「……」


 紅は1人目を覚ます。


 感じ取ったのは、微かな磁波の乱れ。

 出どころは、……雲の中。


「……なるほどな」


 雲に覆われた真っ暗な空を見上げ、紅は理解した。


 彼女の声に反応し、部下も目を覚ます。


「?どうしまし……あぁ、」「あんなのどうしろって言うんすか⁉︎」「うわ〜、こわー」


 各々空を見上げ、魔力を練る。



 瞬間――紅が電磁バリアを発動すると同時に、直径数m規模の数千、数万の氷塊やツララが天から降り注いだ。



 ズガガガガガガガガッッ‼︎という途轍もない破壊音を轟かせ、町を吹き飛ばし、地面を抉り、砕け散る自然のミサイル。


「有難うございます姉御」


「「「有難うございます」」」


「ああ」


 紅は再び寝っ転がり、バリアに当たり砕ける氷塊を眺める。


 中には10mを超える物まである。もしこれが初期の頃から続いているというのなら、下手なモンスターなんかより余程恐ろしい。


「……これが朝までか……チッ、明日戦闘があれば全て任せる」


「うっす」「当然です」


「寝ろ」


「「「はい」」」


 雪時々爆撃。


 紅は五月蝿いBGMに寝返りをうち、目を瞑った。




 ――翌日。


「……今日はいい天気だ」


「何言ってんすか?ずっと雪でしょ」


「黙れ」


「……(俺何で今怒られたんすか?)」


 康にソリを引かせ、その上で寝っ転がる紅は、つまらなそうにスマホを弄る。


 とその時、彼女の目が少しだけ見開かれた。


「おい、見てみろ。マサの奴顔出ししてるぞ」


「は⁉︎」「ほう、凛々しいな」「俺にも見せろ!」「え、見たい見たい!イケメン?」「そうでもないわね」「ッおいお前らっ、モンスター押し付けてくな⁉︎っクソ‼︎」


 置いて行かれた1人は愚痴を吐きながらも地面を踏みつける。

 土の槍を乱起させ、一瞬でウルフの群れを串刺しにした。


「ほら進め」


「え、ちょ俺にもっ」


 紅はスマホを閉じ、顎をしゃくる。


(……どうせ国にもバレていると見て自分から出したわけか。愚策ではないが良策でもなし。

 日本のメディアはバカばかりだぞ?はてさてどう対処するのか、見ものだな)


「姉御次どこ行くっすか?」


「……函館でも行ってみるか」


「了解っす」


 物音にビックリし逃げるモンスターを追い越し、今日もソリは風を切る。

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