罪を知れー天を知れー地に立つ己の無力さを知れ
紅瞳に射すくめられ、見美の膝が自然と折れてしまう。
半分獣化した亜門は全身の体毛を逆立て、しかしその覇気に一切動けないでいた。
我道は波紋を描くおちょこを置き、1息吐く。
「……今、私の目の前には、神が座っていると?」
「カッカッカ、言い得て妙。神と呼ばれたこともあったの。他にも龍王や白龍、邪神なんて呼ばれた時もあった。懐かしいものよ」
眉間を揉んでいた我道は、なんかもう話がデカすぎて思わず小さく吹き出した。
「っふ、……貴殿以外にも、記憶を持って渡って来た者が?」
「おらんな。次元を渡る際、形を保てた者は我のみ。また1人ぼっちになってしまったと嘆いていた所を、アメリカ軍が歓迎してくれてのぉ、嬉しくて思わず国土を焼き払ってしもぉたわ。カッカッカ」
「……チッ、」
成程、それは不運だな。と我道は舌打ちするステラに同情し、瞑っていた目を開ける。
「人を導き照らした神なら、『聖炎』と呼ばれるのも頷ける」
「じゃろ?結構気に入っとる。しかしあれらも見ていて面白かったが、いやはやこの世界程ではないわい。我は主らに首ったけじゃぞ!」
「それは嬉しいお言葉だな」
クツクツと笑う神に、我道も笑い、そして気を引き締めた。
「……では『聖炎』のアルバ殿、本題だ」
「む?」
「今の話から大体の要因は察したが、今一度確証が欲しい。……何故日本だけが『大地』に呑まれている?」
「無論、この地に『開闢の王』の1柱、『大地』の白が生まれたからじゃろうな」
「……やはりか、」
頭を押さえる我道総理は、見美を片手で呼ぶ。
「……はい、総理」
「……記録室にいる人間を、部屋から1歩も出すな。この話を聞いた者の戸籍を全てリスト化しろ。厳戒秘匿令を出す」
「……承知しました」
部屋を出て行く見美。
神妙な面持ちで何かを考える我道に、アルバは付け足す。
「『開闢の王』は世界の理。
『大地』在る所に大陸が生まれ、命が芽吹く。しからばそれと同じように、『冥海』在る所に海が生まれ、『天空』在る所に空が生まれる。
他の白がどのような形で生まれたかは知らんが、我を除く3柱の中で、主らは最も生存率の高い王を引き当てた。豪運よ」
「……生まれないにこしたことはない」
「カッカッカ!我を前に酷いことを言ってくれる。しかし全くもってその通りじゃ!カッカッカっ」
そこで、それまで座っていたステラがゲームを止め、ソファーに寄りかかりながら後ろを向く。
「さっきそいつも言ってたが、球体を通ってきたdvmは、俺達が紡いできた伝承や妄想を元に形を作っている。
お前らの国はアニメ、漫画の聖地、要するに妄想大国なわけだから、生まれ落ちるモンスター同様、人間のdvmへの適応も相当速かった筈だ」
「……確かに、世界が変わったその日に適応していた者も数多くいた」
「クハっ、とんでもねぇな!アメリカは最速でも1週間はかかったぞ」
ステラは笑い、コントローラーで我道を指す。
「そんなポテンシャルの塊を抱え、『王』の洗礼を耐えている国、他にねぇ。……改めて協力関係を結ぼうぜ、日本。俺達はそのために来た」
「っそれは、願ってもいないことだが、」
「んじゃ決まりな」
未だ詳細な身分も分からぬ少女との口約束だが、彼女がこの盟約を反故にするとは、その場の誰も思わなかった。
ステラの握手に応じる我道は、戸惑いつつも尋ねる。
「Ms.ステラ、君は何者なんだ?」
「おお、そうだな。あー……おいお前」
ステラは戻ってきた見美を呼ぶ。
「はい?」
「お前『
「……かしこまりました」
何故分かったのか、そんな疑問を見美は飲み込み、cellを発動した。
――
「……大、罪?」
驚きながら鑑定結果を用紙に記入した彼女を、ステラが笑う。
「そう、大罪だ。皮肉だよな、人が人たり得る力の根源は、イエスの時代から俺らが忌み嫌っていた大罪なんだとよ」
我道は息を呑み、目の前の少女を見つめる。その、小さな背中に、世界の大罪を背負った少女を。
「……これが、選帝の?」
「そうだ。改めて、俺は選帝者の1人、『傲慢』のステラだ。……チッ、この俺が傲慢だぜ?世界1寛大な心を持ったこの、俺がっ。俺にこんな称号付けた奴、いつか引きずり回して吊るして火炙りにしてやる」
「星の思し召しじゃよ」
「なら星を吊るしてやる」
キッ、と目を細めるステラだが、その場の誰もが(妥当だ……)と心の中で呟いた。
とそこで、アルバがズイ、と前に出る。
「のぉのぉ、我のも見るか?どうじゃ?」
「い、良いのですか?」
「構わん構わん」
この神様はどうやら思っている以上にフレンドリーなのかもしれない。ステラが嘲笑に鼻を鳴らす。
「露出狂が」
「黙れ小娘、誠意じゃ」
「自慢したいだけだろ」
「誠意じゃ」
言い合う2人を横に、見美は総理に視線を送る。頷く彼に1息吐き、気を引き締めた。
「で、では、良いでしょうか?」
「うむ、よいぞ」
――懼ωЖ∞℃『ル@夏艚@』――
――
「っ……これは、」
1つ目は何が書いてあるのか分からない、というか視認は出来るが理解が出来なかった。
困惑しつつも書き取る見美に、アルバは分かっていたように頷く。
「どうじゃ、2個あったじゃろ?」
「は、はい。ですが1つは文字化けしていて、」
「それは前の世界の力じゃからな、読めないのは当然じゃ。まぁ似たような力だと思ってもらって構わない」
一体どういった力なのか、そんなこと聞いたところで大した意味は無い。何せ森羅万象を1から作り上げるような力なのだから。Cellの理解もまだまだな人類では、神の一端を理解することなど到底不可能だ。
しかし1つだけ分かっていることもある。それは、
……敵対した瞬間、滅亡が確定するということだ。
−追加補足−
読み方
カイザー【プライド】クロノス マーティア
ディンギル ウドゥ ガルタ
はてさて、何語かな?
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