16日目 血の朝
――真っ赤な朝。血の様に赤い太陽が、緑の大地を燦々と照らす。
竪穴の上でトグロをかいていたノエルが目を開け、首をもたげる。
「……チロロ」
遠くに感じる。数え切れな程の殺気。好意。嫌悪。
愛憎入り混じる、汚濁した狂気。
……始まる。自分史上、最も死に近い戦いが。
「……」
縦に割れたアメジスト色の瞳で、ノエルはずっと向こう、美しい花を揺らす同胞を睨みつけた。
「……」「……」
東条と灰音は、互いに背を向け服を脱ぐ。
軍用式強化合成繊維で組まれたズボンとジャケットを着て、ブーツを履いて、その上からタクティカルベストを装着、最後にスタイリッシュなフルヘルメットを被った。
2人の身体には、昨日の内に取り付けておいた弾薬やマガジンがこれでもかと並んでいる。
「……」
灰音は腰につけた2つのホルダーにベレッタM92自動拳銃を差し込み、ベストの脇腹にもう2丁装着。
両腿のレッグシースにバトルナイフを差し込み、最後にHK417アサルトライフルを、1つは肩に掛け、もう1つを片手で持った。
「……」
東条はベネリM4ショットガン2丁を背中のホルダーに差し、左手にレミントン870MCSショットガンを、右手にもう1丁ベネリショットガンを持ち、肩に担ぐ。
その様相、正にショットガンに呪われた男。
灰音はそんな彼のロマン装備を見て、思わず吹き出した。
「⁉︎っ、ほんとにそれで行くの?」
「あたぼーよ。……死ぬかもしれねぇんだ。自分の好きな武器使うのが1番だろ?」
「……うん。だね!」
互いにヘルメットシールドの隙間から笑い合い、外へ向けて歩き出す。
「……なぁ灰音」
「何?」
「俺の名前は、東条
灰音は一瞬驚くも、銃を握りしめ、噛み締めるように頬を染める。
「……そっか、桐将君か。……絶対に忘れないよ」
「ああ」
拳を合わせ、2人は戦場へと歩みを進めた。
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