12話
§
『スゲぇ総隊長ケモ耳だ!』『ノエルちゃん可愛い』『ノエルちゃん可愛い』『大人に混じって特区を駆ける幼女の場違い感よ』『それに全員がプロの戦闘集団ときた』『違和感よ仕事しろ』『ノエルちゃん顔見せて‼』
「顔?こう?」
ノエルの顔がドアップで映し出される。
『キャーーー‼』『キャーーー‼』『キャーーー‼』『キャーーー‼』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『キャーーー‼』『キャーーー‼』『キャーーー‼』『キャーーー‼』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『尊死者多数‼』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『キャーーー‼』『キャーーー‼』『キャーーー‼』『キャーーー‼』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『救急車を呼べ‼早く‼』『グハァッ』『グハァッ』『キャーーー‼』『キャーーー‼』『キャーーー‼』『犠牲者が多すぎます‼間に合いません‼』『キャーーー‼』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『キャーーー‼』『クソッ‼こんなのどうすればグハァアッ‼』『隊長‼グハァッ‼』『キャーーー‼』『キャーーー‼』『キャーーー‼』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』『グハァッ』――
「がっぽがっぽ」
ノエルは画面から目を離し、そろそろか、と警戒を強めた。
「亜門、止まって」
『総隊長にタメ語かよ‼』『おいカオナシお前んとこの教育はどうなってる‼』『誰かこの子に年上の敬い方を教えてくれ‼』『そんなノエルに痺れる憧れる‼』『間違いない‼』
「ノエル殿?どうしました?」
『総隊長は敬語かよ‼』『いいぞケモ耳彼女を敬え‼』『ノエルこそ我らが神だ‼』
「ここから五百mくらい先の大学、ちょっと確認したいことがある」
「大学?生存者ですか?」
「違う。モンスターの大群が根城にしてた。今もいるのか気になる」
ノエルは嘗て見た猿の大群を想起する。
「……我々の目的は生存者の発見と救出です。下手にモンスターを刺激すると、これからの作戦に支障が出る恐れがあります」
『その通りだな』『言ってやれ亜門‼』『がんばれ亜門‼』『生意気な幼女にわからせてやれ‼』
「そこの親玉はノエルと同じ位強かった。そいつの現在地を把握できてない方が、危険だと判断する」
「「「――っ」」」
亜門を含めた隊員全員が驚愕する。これと同じ強さを持つモンスターなど、冗談ではない。
亜門の頬を、冷汗が垂れる。
「……では我々も」
「亜門達は百m離れて警戒してて。でもまぁ、死にたいならついてくるといい」
「「「……」」」
――お前は私より弱い。邪魔だ。
――誰が聞いても分かる、完膚なきまでの戦力外通告。
『んほぉぉぉぉお‼』『んほぉぉぉぉお‼』『んほぉぉぉぉお‼』『んほぉぉぉぉお‼』『んほぉぉぉぉお‼』『んほぉぉぉぉお‼』『んほぉぉぉぉお‼』『んほぉぉぉぉお‼』『んほぉぉぉぉお‼』『んほぉぉぉぉお‼』『んっほぉぉぉぉぉおおおおおッ‼』
「……分かりました。ただ、くれぐれも気付かれぬよう」
「ん。ありがと」
『お礼を言えるノエルちゃん偉い‼』
――ノエルは五十m、三十mと近づいていき、すぐにその違和感に気付く。
「あ、」
隊員の一人が声を上げた時にはもう遅い。彼女は塀を飛び越え敷地の中に入ってしまっていた。
ノエルは魔力感知とピット器官を併用し、大学内を見渡す。
しかしやはり、視認できる通りそこはもぬけの殻。半径百m以内には、自衛隊以外の存在は感じ取れなかった。
至る所に散在する、ありとあらゆるモンスターの骨、骨、骨。
トレントに吸収されなくなるまでしゃぶりつくされたその骨の中には、当然、人間の物も数え切れないほど転がっている。
ノエルは嘗てここの王が自分を見降ろしていた、校舎の四階へと足を運んだ。
――祭壇の様に飾られたドアを蹴り壊し、中に入ると、そこには……。
「……」
乱雑にばら撒かれた初等教育レベルの教科書。
人骨で作られた王座。
そして何より不気味なのが、天井、床、壁一面にびっしりと書かれた、数字や平仮名、計算式に宗教的な抽象画であった。
「……」
ノエルは考える。
恐らくあの汚らしい白を纏った白猿は、わざと人間を攫い、ここで知識を身に着けていたのだ。
外に転がる人骨から見て、死ぬもしくは不必要になった男は部下にあげていたのだろう。
王座に使われている人骨を見れば分かる。奴は女を好んで食っている。
そして少なからず、自分にもその気持ちが分かってしまうのだ。
……人間は、男よりも女子供の方が美味い。
「……チッ」
ノエルは湧き上がる嫌悪に、王座を蹴り壊す。
嘗ての食の好みが同じで、知識への貪欲さも同じ。
生物としての分類も、格も、強さも同じ。
まさと出会って好きになった、自分の体表の色まで似通っているときた。
殺意すら抱く同類具合だがしかし、同時にそれは、相手が成長した今の自分と、同等の危険度を誇っているということに他ならない。
ノエルは自分の強さを見誤らない。
彼女の中に、一抹の不安が過った。
§
・作者の一言
Wordではちゃんと赤だったのに。赤文字対応してないとか、萎えたわ。
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