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「まささんtuberなんですか?あ、だからノエルさんカメラ持ってたんだ」


「そうですそうです。皆さんも機会があったら是非見て下さいね?」


「絶対見るっす‼」


 飛びついてくる殴打娘の頭を撫でながら、引き続き皆で身体を寄せ合い筏の上で温まっていると、


「にゃああああああ――」


「お、ご帰還だ」


 上空から急降下してくるノエルを確認する。


「――ぁあああッブふっ」


 彼女は盛大に着水する寸前、巨大な綿花を生み出しそこにダイブした。


 綿毛を身に纏い、服の臭いを嗅ぎながら出てくるノエル。


「……ん。臭いはついてない」


「おかりー」


「ん。ただまー」


 盛大な合流を果たしたノエルを、皆で盛大に迎えた。




 ――ノエルの操作により自律的に歩行する筏に乗り、駄弁りながらゆったりと大学を目指す。


「あのおっきな壁と木も、ノエルさんが出したんですか?」


「ん」


「「「すごーい!」」」


「まささんも魔法使えるんすか?」


「ん?あ、うん。勿論ですよ!ほら!私凄い力持ちでしょ?」


「確かに!それも魔法だったんすね‼」


「そうだともそうだとも」


「……魔法って凄いんですね。あんな奴等のとは比べ物になりません。そう言えばあいつ等どうなったんですか?」


 ノエルが東条とチラリと目を合わせ、口を開く。


「変な魔法使われてモンスターいっぱい集まって来た。自爆的なあれ」


「あ!だから壁造ってくれたんすね‼」


「ん」


「ノエルさん凄いっす!尊敬するっす‼」


「よきかなよきかな」


「本当に何から何まで、有難うございます。本当に、尊敬します」


「ハハハ、やめて下さいって。私達はそんなに殊勝な人間じゃないですよ。でも、有難うございます」


 和気藹々と進む筏の上、東条の膝の上に丸まっていた殴打娘が遠方を見て跳び起きた。


「あれっすか!」


「そうそう。壁の上にいるのは……、あぁ、私に貴女方の助けを依頼した女性ですね。律儀に待ってたみたいです」


「凄い視力ですね……。それは、ちゃんとお礼を言わないといけませんね」


「そうですね。あ、その前に」


 漆黒と洗濯機を回収し、山の様な日用品を筏に移す。漆黒が自分の中に帰ってきた安心感に、東条が身震いした。

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