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 §



「……化物だな」


 彼は姿を消し、遠くの物陰からワニが振り回される様を見ていた。


 先程いつも通り散歩に行こうとしていたところ、飛んでいく二人を見て興味本位でついてきたのだ。


 何をするのかと見ていれば、自分からモンスターに突っ込んでいき、怪獣バトルを繰り広げ始めた。

 誰がどう見ても常軌を逸している。


 彼は、東条とノエルが初めて大学に来た時の事を思い出す。


 あの時は姿は消していなかったが、発散される魔力は極限まで消していた。


 にもかかわらず、入ってきた来たと同時に目が合ったのだ。


 勿論驚いたが、それよりも、二人が纏う魔力の密度が、今まで邂逅したどんな強者と比べても桁違いだった。


 加えて藜組の組長を遠目から見た時と同じ様な、本能的な恐怖を感じてしまった。


 格が違う。


 並ぶことも許されない圧倒的な差。

 自分も強者の中の一人だという自覚を、根こそぎ毟り取られた様な感覚。


 あの時は正に蛇に睨まれた蛙であった。

 目を逸らすだけで精いっぱいだった。



 ――二人がワニの足を一足切り、先に進んで行く。

 彼もそれを見て、慎重に丘から丘へと飛び移っていく。



 しかし言い換えれば、自分もあのレベルまで強くなれる可能性があるということだ。


 それは何ともウキウキで、ワクワクな事だろうか。


 強くなりたくば見て学べ。そんな気持ちを胸に、彼は二人を追うのだった。



 §

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