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「バラルァ!」
「ッぶねっ」
鞭打つ尻尾を屈んで躱し、低姿勢で突貫。
振り抜かれる前足に手を掛け、飛び上がった。
瞬間、
「――ッ」
瞬きの間に首を持ち上げたワニが、大きく口を開き左右から顎を閉じた。
一本一本が
「何だよ、強ぇのもいんじゃねぇか」
両腕を開き押し止める東条が、この地一帯にそぐわない殺傷力の高さに乾いた笑いを浮かべる。
衝撃波を放ち脱出を試みようとした途端、今度は景色が逆転した。
「なっ、お⁉」
「バラララララッ‼」
道路が剥げ、近隣のガラスが砕け散り、建物が吹き飛ぶ。
ワニ特有の絶技。自らの身体を高速で回転させ、肉を食い千切って殺す、デスロールと呼ばれる技だ。
只でさえ強力無比なこの技を、モンスターの力で行えば、それは最早災害である。
一分間ワニが暴れ転がった後には瓦礫すら残らず、ただ汚れた水が揺れるだけであった。
「バフシュルルル」
ワニは荒く鼻息を立て、ズタズタになったであろう口に挟まった獲物を咀嚼しようとする。
しかし、顎が動かない。
開くことが出来ない。
焦り頭を振っている途中、聞こえてくる笑い声にビクリ、と固まった。
「いや~ビシャビシャになるとこだった」
水に叩きつけられる寸前で全身武装した東条は、首を鳴らし、再度腕と脚に漆黒を集結させる。
「おぅおぅ暴れんな」
「バっ⁉」
東条は一番太い牙を引っ掴み、ワニを強引に上に持ち上げた。
重量差が逆になり、彼が地に落ちると同時にワニの半身が持ち上がる。
「今度はぁ、俺の番ッ‼」
天に向けて伸ばした両腕を、思いっ切り振り下ろす。
轟音と共に水が割れ、衝撃のあまりワニの鱗に罅が入った。
「まだまだァッ‼ハハハハハッ――」
身動きの取れない敵を、滅茶苦茶に振り回し、叩きつける。
撒き散らされる破壊の痕跡は、デスロールの比ではない。
衝撃に耐え切れなくなり、ビルが一つ倒壊した。
全身の鱗が砕け血が吹き出すのを確認し、
「オウルァッ‼」
「バファっ」
最後に民家にぶん投げ生き埋めにした。
濛々と立つ土埃を背に、東条は腕を回しノエルにピースする。
「どうだ!いい絵撮れたろ!」
「最高!」
ニパっ、といい笑顔で笑い合い、ノエルを回収しに行こうと脚に力を込めた。その時、
「バララァアッッ‼」
満身創痍のワニが最後の力を振り絞り、豪速で東条に飛び掛かり顎で挟んだ。
しかし東条は身体を捻ろうとするワニの牙を瞬時に掴み、
「ふんッ‼」
回転と同時に逆方向にぶん回す。
結果は明白。
自重と馬鹿力に挟まれたワニの首は、悲鳴ともとれぬ音を上げ千切れ飛んだ。
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