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「おいおいおいおい、何だ問題か?」
先頭に立つガタイのいい男が叫ぶ。
髪はドスの効いた紫色。身長は百八十程、東条よりデカい。
一目見て分かる悪人面だが、無邪気さが残っているというか、ガキ大将という表現が一番しっくりくる。
「あ、毒島!このおっさん早く追っ払ってよ!」
「あ?」
「で、では」
毒島の姿を見た大人達は、そそくさとその場から去ってしまった。
(何だ?そんなに影響力がある人間なのか?……それに……)
「またあいつ等か。そろそろシメっか」
物騒なことを口にする彼を、東条はじっくりと観察する。
その視線に気づいた彼はニヤリと笑い、手を差し出した。
「
「あ、ああ。まさでもカオナシでも、好きな方で呼んでください」
案外フレンドリーなのか?それにその語尾はなんだ?頑張って敬語を話しているのか?
「あははっ、何それ。あんたが下手に出るとか珍しいじゃん」
「うるせぇな!俺は強い奴には敬意を払うんだよ!」
ケラケラと笑うJK達に怒鳴り散らす彼だが、軽口を許しているところを見るに、顔程怖い人間じゃないのかもしれない。
「カオナシ、ちょっと場所変えて話さねぇか?っすか?」
「え?別にいいですけど」
突然のお誘いにビックリする。
「なになに?告白?」
「うるせぇっ‼散れ女ども!」
「ハハハっ。カオナシっち、そいつバカで顔恐いけど、悪い奴じゃないから安心して」
「おう」
「じゃねー」
「じゃねー」
高年集団が来た頃から寝ているノエルを起こして、二人は毒島率いる戦闘集団についていった。
使われていない教室に案内された東条とノエルは、適当な椅子に座り毒島と向き合う。
二人の前にはお茶と少量の菓子まで用意される丁寧ぶりだ。
十数人ほどの部下なのか舎弟なのかが全員出ていくのを確認して、毒島が口を開いた。
「いきなり連れてきてわりぃなっす」
「別にいいですよ、暇でしたし。あと普通に喋ってもらって構いませんよ」
努力は伝わるのだが、逆に気になってしまう。
「そうか?そりゃ有難ぇ。実は敬語ってのを使ったことなくてな、ややこしくてしょうがねぇ」
「そ、そうか」
現代日本に生きてきてそんなことがあり得るのだろうか?見た目通り世紀末からタイムスリップでもしてきたのか?
「で、俺達に何の用?」
「おう。あんた達に依頼したいことがあってな」
依頼、という言葉に、ノエルの菓子を掴む手が止まる。
「というと?」
「俺達は近い内にここを出る。朧の奴も最近派手に動いてるしな。
んで、その際危機に陥るだろう俺達を助けてほしいんだ。
俺達はあいつみてぇに強くねぇし、属性魔法も使えねぇ。必ず死にかける。だから「論外」っ……」
説明途中の毒島を、ノエルの冷たい一言が遮った。
「ノエル達は進路を指定されるような依頼は受けない。それに、その条件に見合う報酬をそっち側が用意できるとは思えない」
「……」
急に饒舌に話し出した少女に一瞬驚いた毒島は、無慈悲な返答に腕を組んでしまった。
東条としても同じ考えだ。
自分達は無償の施しは絶対にしない。食料を配り歩いているのも、結果として自分に利益があるからだ。
「そーゆーこった。諦めてくれ」
彼等は交渉相手足り得ない。そう判断した二人は席を立とうとした。
……しかし、
「待ってくれ。あんた等のやり方は理解してる。はなからただ助けて下さいなんて言うつもりはねぇよ」
毒島はなんら焦った様子もなく、二人に待ったをかけた。
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