第26話
佐藤と若葉の二人は、最後に小さな林へ辿り着いた。
「勝手に入るのも悪いしの、外側からにしよう」
「……?誰かいるんですか?」
「ん?聞いとらんかったか?いや、頼まれたのは儂じゃし、儂が悪いな。
実は佐藤さんが寝ている間に住人が一人増えてな、リーダーが起きたら呼んでくれと言われたんだ」
佐藤は木々の中に入っていく若葉を見送る。
「筒香さん以外はまだ会ってないと思うから、呼んで来るから先に戻っておいてくれ」
「そ、そうなんですか。分かりました」
鬱蒼と茂る木々に手を合わせてから三人の元へ帰る。
「……リーダーか」
佐藤は何かむず痒いような、慣れない感覚に空を見上げた。
――「……戻ったか、」
「はい、遅くなって申し訳ありません」
「構わん」
「あの、新しく来た人の事って何か知ってます?」
「ん?何だ、聞いたのか。サプライズにしようと思っていたんだが」
葵獅がつまらなそうに肘をつく。
「あたしと紗命もまだ会ってないのよ。何でも初見のインパクトが強すぎて、皆目が点になったらしいわよ」
「楽しみやわぁ」
散々な言われように興味と共に不安が湧いてくる佐藤。
「なかなか凄い青年だったな。「話したい事も多いでしょう」と、俺達四人の意も汲んでくれた。悪い人ではないと思うぞ?
身体も鍛えているようだったしな」
「別にそれは関係ないでしょ」
「大いにある」
自前の筋肉論を展開する葵獅だが、彼が言うのだから間違いないだろうと佐藤は安心した。
――「え、……あれ?」
「あれだな」
若葉の隣を、直立した等身大の芋虫が歩いている。
服を持っていないのだから仕方ないが、何とも様にならない格好であった。
「確かに、インパクトはあるわなぁ」
「最初は下着だけ穿いて身体中血だらけだったらしいぞ」
普段であったら関わってはいけない類の人物との邂逅に、四人共々ソワソワする。
「こんな格好で申し訳ありません。服が無いもんで」
「気にしなくていい。さっきも一度会ったが、此方から自己紹介させてもらう。俺は筒香 葵獅だ」
「私は佐藤 優と申します」
「うちは黄戸菊 紗命いいます……凜さん?」
「あ、うん。あたしは月島 凛。……よろしくね」
彼は相手方の名前を必死に頭に叩き込む。
「俺は
「よろしゅう。武将みたいな名前やなぁ」
「ははっ、よく言われます」
彼とて男。想像以上の美女の登場にテンションが上がってしまう。
「早速で悪いんだが、中の様子を教えてくれないか?」
「えぇ、いいですよ」
――彼は、モンスターから逃げ、トイレに隠れたことを。
ゴブリンに見つかり、殺したことを。
狼と死闘を繰り広げたことを。
あの日から自分に起こったことを、できるだけ細かく伝えていった。
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