嫌われ者のダンス
子月豕
幕引きは???の手の中に
真っ黒の人ゴミの中、絶えず聞こえる小さな笑い声とひそひそ話に嫌気がさした。
思わず舌打ちが出た。
今日は特にどす黒い雨と、降り注ぐ日光がうざったい。
そこには、同級生がいた。
最もここに似つかわしくない。
いや、いてはいけない人間だ。
無言で拳を振りぬいた。
僕の憧れの人は、いわば嫌われ者だ。
容姿端麗、成績優秀、芸能活動も行っていた。
皆、揃いも揃って妬む。
しかし、雲をにらみつけた鶏がいただろうか?鯉やアユを羨むミミズがいただろうか?
答えは否。生物としての格が違うからだ。
だからこそ、僕はなんでそうなるかわからない。
それを思い切って付き合っていた恋人に聞いたら
「は?あんなやつのことが好きなの?ありえな~無理だわ」
といい別れられてしまった。
まぁそんなこと言う僕も、恋愛がよくわからないのも事実だ。
そんな僕が、あこがれた理由は簡単だ。
僕は欠落している部分がある。それをたまたま、ダンスホールで出会ったばかりのその人に聞かれた。
それを肯定してくれる友人がいなかった。
いや、友人ですらなかったのだろう。
そんな中、その人は「それの何が悪いの?」と言い切ってくれた。
そこから、憧れの人となった。
彼女には僕しか話せる相手がいなかった。
僕にはそれがどうしようもなく、うれしかった。
学校の間だけは彼女を独り占めにできた。
ダンスホールでは二人きりを作れた。
本当に楽しかった。
だけど
彼女はある日からどちらにも来なくなった。
家に行っても、電話をしても会話しかできず、他は何も出来なかった。
テレビやドラマにも出なくなった。
3週間ほどたって彼女に呼び出された。
そこは、彼女と最初に出会った場所だった。
「覚えてる?」
ただ彼女はそういった。
うなずいて返した。
「そう、ならいいの。1度踊ってくれない?」
「分かった」
踊り終わった後。
「ごめんね?」
そう言って彼女は儚い笑みを浮かべて・・・・・・・・・・・・・・・
振りぬいた拳に、確かな手ごたえと、鼻を潰したからであろう血が付いた。
「なにすんのよ!」
「死ねよアバズレが。」
「んなっ!?」
そしてもう一度拳を振りぬいた。とても悪いと思うが、これでいじめを虐待を表面化する。
彼女のノートには、そんなことしてほしいとは書いていなかった。
だからこれは自己満足だ。守れなかった僕の、僕だけの。
これのおかげで僕は犯罪者の嫌われ者。
少なからず彼女は悲劇のヒロイン、こいつは知らん。
僕みたいなやつに話しかけてくれてありがとう。死んでまで君を嫌わせはしない。
感謝を込めて拳をふるった。
血が出る。拳からの血か、こいつの血か、周りの誰かに血か分からない。
赤と黒の衣装で彩られた僕が立つ、最後のダンスステージ。
そんな中、僕は一人笑って泣いた。
もう一度やり直せるなら、願わくば君と・・・
嫌われ者のダンス 子月豕 @kobuta090225
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
七つの美罪/子月豕
★4 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます