パパ上の学校見学
「ぶひぃぃ……ぶひぃぃ……」
最初はよかった。
それこそ、縦横無尽にぐーぐるまっぷが教える道に向かって突き進んだ。
我が愛車ママチャリは、走り続けた。
なかなかの速度であった。
途中、なぜか右に曲がれというから右に曲がったら接続が切れるようなぷしゅんって音を立てて再計算して、すぐに左に曲がれとか言われたりする、ぐーぐるまっぷさんの、「あなたを、最後まで、最短距離で目的地までお連れします」と言わんばかりの意味の分からないルートの案内に負けじと進んでいた。
本当に意味の分からないルート。
なんだよ、この、人がほとんど通っていなくて草ぼうぼうの道は。
え、ちょっと待って。
あんた今、ここを突っ切れっていってるけど、この道は横断歩道もなければ千葉でも一、二を争う交通量の道路よ? ここを突っ切れ!? 死ねとっ!?
後でわかったことだが、恐らく、自転車は、自動車と同じ扱いのようだ。
なので、自動車が通れる道は自転車も通れると判断して最短案内をする様子。
え、だったらさっきの草ぼうぼうの道は? あれ自動車通れるわけない細い道だぞ?
「ああもう! 地図みせろっ!」
学校見学の時間も近づいてきた。暑さのあまりイライラしてきたセバスが私のスマホを奪い取る。
「こっちだ!」と言って進む先は、全然違う方向。
「待て!」
凄いスピードで突き進んでいくセバス。追いつけない。あの野郎。ママチャリには変速機はついてないんだぞ。必死に漕いでも全然進まない。クロスバイクとママチャリではどっちに分があると思っているのか。
「セバス! 待て! 待てっ! せぇぇばぁぁすぅぅーっ!」
交通量の激しい道で、私の大声が響く。
ここは四車線の千葉一、二を争う交通量の道。しまいにはすぐそばはインターさえもある。大型トラックもびゅんびゅんと通り過ぎる。
そんな場所で横断できるところは、限られているのだ。
「
「いや、もう間に合わないだろこれ! どうすんだよ、パパ上!」
「余裕で間に合う! まだ一時間はあるからなっ! この道を横断したらあとは十分程度で
だからこそ、セバスを説得して、登る。
どこをって?
歩道橋をさ。
おもてぇ自転車を運んで向こう側へと渡りきったら、私の体力も削られる。
そもそもここどこだよ。
どんだけ奥に学校あるんだよ。田舎にもほどがある。一瞬富山王国かと思うくらいの風景に、異世界にでも迷い込んだかと思う。人にも会わないしね。
ポカリをゴクリと飲むと、水筒の中が空になる。
あれ。学校見学中に喉乾いたらこれどうすんだ。
「
たどり着いた目的地。
どう考えても急勾配の多々ある道に、学校の駐輪場に自転車を停めた後、私の足はがくがくである。
これ、帰りもあるのかよと思うと、死ねる気分である。明日の会社が不安になった。
学校見学までは三十分は待ち時間あり。その間、エアコンも効いてない玄関口で待つ。
風も吹かないからまー暑い。
汗を吹いても溢れ出る。体拭きウェッティも汗で延びて効果をなさず。日焼けどめなんて汗でとっくに意味ないぜ。逆に目に入っていてぇでやんの。
学生ばっかで、数人の子どものお母さん。男親は私一人という勢い。
疲れのあまり、とんでもない汗をかき続ける私。
びしっとするためのワイシャツは、色が変わるほどのびしょびしょ。チノパンもびっしょり。
飲み物はすでにない。自販機もどこにあるかわからないし、校内を歩き回ることもできるわけがない。見学始まってないし。
案内されて座った懐かしの学校の木椅子をびっしょり濡らして湿らせるほどの汗の量にセバスも引く。
バスで見学予定の学生たちが、バス遅延。始まるまで三十分追加で待つ。疲れすぎて眠い。校内説明の間、速乾のシャツは乾くが、脱いだワイシャツは汗を吸い込みすぎて乾きもしない。
おい、セバス。興味なくなったからって眠るな。ここまで誰のために一緒に来たのかと。
そして一時間程度の見学が終わり。
見学が終わって帰り道。
漕ぐたびに悲鳴を上げてびきびきと痛む太腿。
もはや坂さえ登れない。
だけども、子どもの前で弱音は吐けない。
だからこそ、
「ぶひぃぃ、ぶひぃぃ」
「ブタかっ!」
「いまさらっ!?」
前へ進むために必死に漕ぎ続ける。
帰りはぐーぐるまっぷさんに頼らずに進む。
おい、どういうことだ。
行きに一時間半かけたのに、帰りは四十分程度で家に着いたぞ。なにを案内しとんじゃい。
慟哭さえもあげられないまま。べったりな服を脱いではシャワーへと。二階に着替えを取りに階段さえも上がれない。
シャワーを浴びる際に床に座ったらもう立ち上がれない。ただただシャワーを受け続けて放心状態。
これを毎日……?
私は、どれだけ元気だったのか。
JKのスカートにどれだけ期待し――( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン
セバスは帰ってきたらすぐさまゲーム。
元気だね、お前は……。
二階の寝室にあがって横にもなれないこの疲れ。
でも頑張ったと思う。
ママチャリで、よくあそこまでいった、と自分だけが自分を褒める。
「ぶひぃぃ……」
もう、若くないんだな。
と。
痛感し、涙がぽろりと溢れていった。
ぱぁんなこぉったぁぁ……………
ええ。この話。
本当に直近のお話です……。
今、私の両太腿は、見事にぱんぱんに膨れ上がり、歩くたびに鈍痛を響かせます。
まだ先日よりましになったものの、この完治のしなささは、まさに歳であるということを彷彿させます。
ええ、私はもう。
歳なんです。
認めよう。
歳なんです。
だから私は、暑中お見舞いの着物姿なの何かを描こうとして、断念してるんです。
そうだ、きっとそうだ。
そもそも私が着物っていうか浴衣っていうか、それ系にしていないお絵描きはどれほどあるのか、それほどないんじゃなかろうか、いやあるな。でも、よく描いてる方々はほぼほぼ浴衣やら着物やらになってるな。じゃあもういいんじゃないか。うん、いいんだ。
誰もその姿にしてほしいという人もいるわけじゃあるまい。
よし、今年は……ああ、そうか。
わたしゃ、今年我が家の猛将さまが空へと旅立ったから、正月かけないのか。だったら夏の今こそが描かるタイミングなのか。そうか、忘れていた……。
で、どうしたらいいですかね?(笑
ってな意味不明な自問自答を残し。
にんにんからの~
どろんっ☆
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