滾るパパ上


「よし行くぞセバスっ!」

「ぉぅょっ!」




親子二人。

珍しく二人で同じ目的地へと赴くその一部始終を、お届けしよう。



息子ことセバスも、ついに受験生。



自分の行きたい高校に、会いにいく。



と、「俺より強いやつに会いに行く」みたいな、どこぞのストリートファイタ〇っちゅうゲームのように銘打って、セバスは学校説明会へとちょこちょこ向かっていた。


その中でいくつかの学校説明は、例の猛将さまがお空へと旅立った時にちょうどあったりしていけなくなっていたりするけど、大体二回、ないしは学園祭とかでチャンスはあるから次のチャンスに賭けるとして、まあ、ほとんどは、妻であるティモシーか友達とセバスは向かっていたわけで。



一つ。

偏差値的に、ちょっと遠いかな程度の学校があるけども、自分の行きたい学科や部活があって、部活の先輩も行っているからそこに興味がある、といったセバスが選んだその学校の学校説明会が近づいてきた。


「あんたが一緒にいってあげなさい」

「……なんで? 別にいいけど」


妻ことティモシーことボナンザでありサイヴァイアリビジョンから、そう言われなければ、私はセバスと共に学校説明会にいかなかったであろう。


その理由が――


「どれだけ遠いのか、自分が毎日行くとしたら自転車でいけるのか、試してみたいんだって」

「試せばいいじゃん」

「私は嫌よ」

「……ああ、なるほど。つまりは俺が先導して連れて行けってことなのね」



というわけで。

私が、その学校への道案内兼一緒に学校説明会に行くことになったわけで。


まあ、私としては。

普段、ほとんどボナンザに任せている子供であるからして。だからこそ、育児教育の一環としてこういうことをするのは吝かではない。

それに、ティモシーがなぜ私にそのようなミッションを与えてきたかの理由はしっかり理解もしている。


「懐かしいな」


私の高校時代。

雨の日も風の日も。晴れの日も雪の日も。私は、自転車で高校に通っていたからだ。

毎日50分近くの自転車通学。通勤ならぬ通学。

あまり大通りを走ると危険なので住宅街をすり抜けて、富山王国ではそれなりに頭よさげな普通科高校を横目に通り過ぎ。時には可愛いJK見つつ「うほっ」とか思いながらその横を自動車のように通り過ぎていく。

その巻き起こす風に、スカート捲れないかなとかおも――( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン



こほんっ。



学校まで続く一直線のとんでも広い道路に出れば、一気に変速チェンジ。

ペダルが一気に重たくなろうが関係ない。

そのまま普段と変わらないレベルでケイデンスを回していく。そうなるとどうなると思う?

そう、隣を走る軽自動車と同じくらいの速度まで自転車は私を連れていくのだ。



無敵。

無双。

快適。

最高。



若かりし頃の私は、あのときほど無尽蔵な体力を存分に有効活用していたことはなかっただろう。

それこそ荒れ狂う暴風のように突き進む私の巻き起こす風でJKのスカートが――( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン




「こほんっ」

「? どうしたパパ上」



当日。

あの時を思いながら、私は今、自転車にまたがる。


調べてみたらマップ上の走行コースの分数は、学校へと向かう分数とさほど変わらない。

久しぶりの長距離ドライブに、私の心も滾る。

富山王国のような広い道というわけでもない。入り組んだ道。都会さながらの道――まだ見ぬ道に、心も踊る。



空は快晴。とは言い難いが、今の時期のちょっとした曇り空は仄かにいい風を運んでくるのでちょうどいい。




「さぁ! 行くぞっ!」


途中で飲みつつ、学校見学中でも喉を潤すポカリをこぽこぽと水筒を満たし、なぜかセバスの荷物も籠に入れ、さあ準備はできた。


「ぉぅょ!」


セバスも気合十分。



いざ!

ママチャリで、私は、走る。









!次回予告!


圧倒的な力の前に屈しかけるパパ上とセバス。

目の前にそびえる急こう配に、パパ上の心は折れかける。


心を潤すオアシス


      ポカリスエット


スポーツマンの力強い味方が

パパ上の心を満たすとき。

パパ上は遥か高みへと登っていく。


次話!

ぶひぃぃぃ……。


絶対みてねっ!

(なお、ネタバレは含んでおりません)

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