パパ上のお料理教室(お絵描き∶『S』さん)
「いいか、お前達。しっかり見ておくんだぞ」
「「はいっ!」」
「一度しかやらないし言わないからな。しっかりパパ上の一挙一動を見逃すなよ」
「「はいっ!」」
「声が小さい! 返事はっ!」
「「三回っ!」」
私は二人――息子のセバスと娘のチェジュンが息のあった返事をしたことを確認すると、満足して「うむ」と頷き席に座った。
「……ママ?」
「ん? どうした。ちなみに、パパ、な」
「始めないの? ママ」
「……え、なにを? パパだけどな」
「あんたが今から教えるって言ったんでしょうに!」
やりきった満足感から、思わず教えるの面倒だなぁとか思いながらさり気なく座ったわけだが、同じく席に座って休んでいるボナンザでありティモシーな妻に怒られて、渋々立ち上がりキッチンへと。
「さて、と……まず、本数によって変わるのだが、お母さんのように優しく、誰からも愛される、明るく親しみやすく暖かみのある店づくりをモットーとしたあの近場のあのお店で買った場合――」
「そんな由来だったのあのお店」
「そうだぞ。だから生鮮が安いのかもしれんわけだが、まあ、これは1本の大きさが小さめだから量があるとも考えて……いや、まあ、そんな店の話はどうでもいい。とにかく、量があるからこそできることでもあるので、1〜2本だけでやる場合はおおよそ6分と考えるといい」
そんなこれを買ったお店の豆知識は、自分で言っておきながらどうでもいいと思いつつ、私はアルミホイルをびりっと少し大きめな手頃サイズに切ってキッチンのエセ大理石なテーブルの上に敷く。
「今回は10本以上あるから、まー、大体6本を隙間を少しだけ開けて並べる」
アルミホイルに並べられたそれは、均等に二段に3本ずつ並べられる。
アルミホイルの大きさはそれらを覆うため、1.5倍ほどの千切り具合だ。
大きすぎても小さすぎても焼き加減は難しいから、丁度いいサイズが必要だが、あのお店は、一度の数と値段と大きさが絶妙なので最近はそこ以外では買ってきてはいない。
「で、これをアルミホイルで包んで、だ」
「ふむふむ」
ここで、包装焼きのように包めるほどのアルミホイルの大きさなのであれば包んでしまうのがよりいいのだが、今回は上から被せるように包んでみる。
ちょっとした隙間もまた美味しくなる秘訣ではあるだろう。
「さて。まずは6分でもいいんだが、最初はあっつあつに10分だ」
包まれたソレをオーブンに入れ、指定の時間まで待つ。
「これで終わり?」
チーンと、音を立てて指定時間の終わりの音を聞き一度オーブンを開けているときにセバスが聞いてくる。
「いや、ここで、もう一度」
私は、熱されたアルミホイルに軽く触れると――
――かちかちと。
もう一度オーブンに火を入れ。
「次は、6分だ」
二度焼き。
そして、チーンの音が奏でられれば、完成だ。
「「うわぁ……」」
完熟。
それに近しいとも言えるほどに焼き上げられたそれがアルミホイルからでてきたときに、私の子供達は感嘆の声を上げる。
「こ、これって、口に入れたときに軽く吸ったら中から汁でるやつ?」
「ああ、そう。中から肉汁のように塩辛さが凝縮された汁が溢れ出るやつだ」
「まま、これ、あつあつの固めのやつ?」
「ああ。熱で一粒一粒が固くなって、それが吸うときに。噛むときに。ぎゅっと圧縮されて粒ごとが中で弾けて内部の汁を出すんだ。後、ぱぱ、な」
二人はごくりと喉を鳴らして、慌てるようにせっせと電子ジャー(炊飯器ね)の中のほかほかご飯を茶碗に載せて席へと走る。
座ると、箸を持って、今私が作り上げたそれを早く口に含みたいとわくわくと擬音が出そうなほどに席で私がテーブルの中央に持ってくるのを待つ。
「ほれ、一人、一本な」
ことりと、アルミホイルから出てきた6本を更に移し変えてテーブルに置くと、子供達は我先にとどれが一番美味しいのかその6本の内の1つを吟味して選んでは摘んで自分の御飯の上に乗せて、白米の山のテッペンに輝くそれを眺めてから、米を一口口に含んでそれも一口大切そうに噛じっては幸せそうな表情を浮かべる。
「……ふむ。まあ、3番目ってとこかな」
そんな私の一言に、子供達は、「この味で、3番目!?」と驚愕する。
見た目の焼き加減はある程度問題はない。
細かい話をするなら、本当は二度焼き前に、中身をひっくり返して二度焼きに挑むべきだったとも思うが、それはまあ、私一人のときにでもやろうとも思う。
今回の焼き加減においては、その本体の焼き加減に重点を置いたわけではない。
今回、私がなぜ、6本纏めて焼き上げたのか。
「これ、本体よりも、こっちが本命なんだわ」
アルミホイルには、酒のツマミとしてもある程度通じる、――私、か弱き乙女だから酒飲めないけど――焼きによって引き締められ中から溢れて中身を通って濃縮された、6本の果汁の如きそのエキスが、今回の本命だ。
1本だけではほとんど出ないそのエキス。
6本だけでも、小匙1杯でればいいほうだろう。
アルミホイルに残る焼けて蒸発することなく残ったエキスを、こぼさないように丁寧に皿へと移し変えてエキスの湖を作る。
子供達はそんな貴重なエキスを、私の一言で先程大切そうに噛じっては吸って中から出てくる濃縮汁より素晴らしいのだと、直感し、「一口だけ!」と懇願した。
そんな子供と、さっきから横で静観してるけど興味のあるティモシーに一掬いだけ飲ませてみせると、全員が一斉に体を震わせ動きを止める。
「「「し、しおっからっ!!」」」
みんながみんな、濃縮された塩辛さにワンテンポ遅れて驚きの声を上げる。
ティモシーに至っては、「美味しいけど歯茎が痙攣する」とまで言う、それ、やばい領域の辛さなんじゃないかと苦笑いしてしまう。
「パパ上。僕、この料理、絶対極めてみせるよ」
「ああ。自分が思う最高の焼き加減、極めて、そして、魅せろ」
「うんっ!」
まあ、
「『たらこ』を焼くだけで、なんでこんな熱く語れるのあんたら」
私とセバスのノリに、ティモシーが呆れる。
そう。
私は、たらこを、16分もかけて焼いだだけなのだ。
我が家ではたらこを焼くとき、私以外の焼き加減では許されない。
明太子ではだめ。
たらこでしかできない焼かれた本体の味と濃縮エキス。
「ああ、セバス。怒られる前に一言言うておくがな」
「?」
「焼いただけ、だから。料理と言ったら、怒られるぞ」
ただ、たらこを焼いただけ。
だからこれは料理では、ない。
でも、息子が、いつか自分の好きな焼き加減で、私にたらこをご馳走してくれることを、ちょっと期待してみようかな、とか。
そんな、しょうもないところだけだけども、アホみたいなところでも息子の成長を願う、私ことパパ上の家は――
――今日も、平和だ。
□■□■□■□■□■□■□■
とまあ、私、何書いてるんですかね? と、途中から思いながら書いたわけですが。
本当、これを料理といった息子が、料理舐めんなと言いたくて仕方なかったです(笑
さて。毎度ながらの。
ここらでぱんなこったをしてみますれば。
タイトルにある、お絵描きの方。
今回の
この方、私の作品を凄い褒めちぎってくれて、楽しいコメントも何度もくれた方で、私が今もこの場で続けていられるきっかけを作ってくれた方でもあろうなと、思ってます。
もちろん、そういう方、他にも何名かいるにはいますし、こうやって私の作品を今も読んでいただけている方や仲良くしてくれる方がいるから今も続けていけてるわけでもあります。
皆様には、とても感謝しております。
さて、なんで私が今回、この方をお絵かきしようと思ったか、というところになりますが、特に深い意味はありません。
いや、前々から描いてみたいなぁとも思っていたわけですが、いかんせん、たぶん、知っている方が見たらイメージとは違うなと、思うこと必至だとも。
要は。見てないからこそできる。そんな感じですね(笑
とはいえ、一応、一番の理由としては。
以前のウェディングイベントにおいても、祝電くれましたし、今回も、伝言くれてますし。
星都ハナスさんとあいるさんを泣かせる為(言い方わるっ。鳴かせるのほうがいい? いや、それだとひわ――( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン)に、嫌な事あって退会したのに、わざわざ協力してくれた人だからこそ。
やっぱり、お礼に描いてみたいなぁと思ったので、描いた次第でございます。
知らない方のほうが多いと思いますが。
そのあたりは、そんなBLの重鎮みたいな方がカクヨムにいたんだな程度に。
https://note.com/292339/n/n994b017cc19b
そんな皆様に。
ぱんなこったの祝福がありますように(-人-)
追伸∶この濃縮エキス。
めっちゃ塩っ辛いので、お気をつけを。
なお、
―――――
Sちゃんのイラスト描いて貰いましょうね。きっと美人だと思うの。
本当に本当にありがとうございます。
Sちゃん、大好きだよ😘
―――――
なんて、とある星都ハナスさんという方(名前伏せますね)から言われたから描いたわけじゃないですからねっ(≧∀≦)
きっかけですけどね(笑
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます