次の町へ
「主」
「あ、セイヤ……終わった?」
「ああ。聖女は全員始末した」
ヴェンとヒジリの元へ戻ったセイヤ。
まず目についたのが、赤銅色の肌に真っ白な髪を持つ『
「本当に、申し訳ございませんでした……今回の件、全て俺の責任です」
「あーあーやめろっつの、誰のせいでもねぇよ。それに、こうしてみんな生きてるんだ。堅苦しいことはナシにしようぜ」
「でも……」
「いいって。それに、おめーはヴェンを守って、オレらを生き返らせてくれたしな」
傭兵たちは、全員が「そうだそうだ」と笑っていた。
生き返ったのではない。ヴェンの魔法で『不死者』になっただけ……ヴェンを見ると、なぜか笑っていた。
「ま、そういうこと。あたしは大丈夫。パパもラーズもみんなも、こうして蘇ったんだし。それに……あんたには感謝してる。あんたが来なかったらあたし、殺されてた」
「ヴェン……でもそれは、俺がいたから」
「あーもう!! いいって言ってるでしょ!! 男のくせに細かいっての!!」
「お、おお……」
ヴェンに圧倒され、セイヤはたじろぐ。
そんな姿を見たバニッシュはゲラゲラ笑う。
「ははは。尻に敷かれてやがる。なぁセイヤ、ヴェンを嫁にどうよ?」
「え」
「主、うれしそうです」
「ちょ、ヒジリってば!! もう……パパも変なこと言わないでよ!!」
傭兵たちは、みんな笑っていた。
◇◇◇◇◇◇
これだけの騒ぎがあったので、もう町にはいられない。
バニッシュたちはこの町のアジトを放棄し、次の町へ向かう準備をした。
俺とヒジリも準備を手伝いながらヴェンに聞く。
「これからどうするんだ?」
「……たぶん、あんたと同じ。ウェイクリンデ大森林の近くにある町にアジトがあるの。そこに行く……それに、あたしたちが買う鉱山も、その近くにあるの」
「……ウェイクリンデ大森林?」
「主。私の復讐相手がそこにいます……どうか」
「わかった」
セイヤは察し、そこへ行くことに決めた。
バニッシュたちが戻り、すぐに出発することになったのだが……傭兵の一人がいつものように大荷物を積んだリヤカーを引こうとして気が付いた。
「……なんか、軽いですね」
五人がかりで引いていたリヤカーが、たった一人で軽く弾けることに気付く。
すると、ヴェンが言う。
「みんなはもう『不死者』の身体だからね。筋力や体力は人間だったころの数倍。怪我をしても血は出ないしすぐに治っちゃうよ」
ヴェンの魔法、『
死体を影に取り込んで自在に作り替え使役することができる。
死体は最大で百人ほど影に収納可能。現在は傭兵団三十人、聖女部隊三十人、ジョカ、そして……ミカボシの死体を収納してある。
ミカボシは、廃屋の壁に磔にされ、心臓がえぐり出されていたところを見つけ、収納した。
最強の聖女の死体。使い道がある……もちろん、セイヤに説明したら「あっそ」としか言わなかった。
バニッシュは、傭兵たちに言う。
「おめーら、次の町がオレらの終着点だ……気合い入れ行くぞ!!」
「「「「「オウ!!」」」」」
セイヤたちは、次の町に出発した。
◇◇◇◇◇◇
「これは……」
「……全滅っぽいね」
アナスタシアとクレッセンドは、セイヤたちから遅れること一日、シアンの町に到着した。
ここで聖女と傭兵の戦いがあったと町中の噂で、井戸端会議をしているおばさん集団に話を聞くと、これでもかと説明してくれた。
「あのね、傭兵団さんと聖女さんが大暴れしたのよ!」
「聖女たち、『カミノコ』さんを探してたみたい。そんな人いないって傭兵さんたちが言うと、聖女の一人が剣を出して……ああ野蛮。聖女って本当に野蛮!」
「驚いたのが……ふふ、聞きたい? なんと男の子が女の子にキスしたのよ! きっとあれは命を懸けたプロポーズに違いないわ!」
「でも、キスした直後ね……死んだ傭兵の皆さんが立ち上がったのよ」
「それで、とんでもない強さで聖女たちを殺して……」
「町長に挨拶して町を去ったわねぇ」
言葉を挟む間もなくべらべら話すおばさんたち。
アナスタシアとクレッセンドは疲れながらも最後まで聞き、セイヤが『聖女任命』を使って少女を聖女に変え、ミカボシたちを退けたことを知った。
二人は宿を取り、一息入れる。
「最強の聖女ミカボシがやられちゃうなんてね……お姉ちゃん、どうする?」
「どうするもなにも、決まってるわ。セイヤに会わないと」
「……まーだお婿さんにするとか言ってんの? セイヤはもう聖女を敵ってみなしているし、下手すりゃお姉ちゃんも死んじゃうかもよ?」
「死なないわ。私はセイヤを夫に迎える」
「はぁ~……」
クレッセンドは頭を抱えた。
この姉。頭が固すぎるところがあるのだ。
「とりあえず……北に向かったみたいだし、行く?」
「当然」
二人の旅は、まだまだ続く。
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