第2話 現実の不幸。乃ち実像。

胸に、異物感を感じた。胸に感じた痛みは、きっと異物感だと割り切った。



私は後ろを向かずに乗り込んだ。君はこっち側にいるわけないのだと。



私は彼岸花の方へと向かった。彼女はほほ笑んだ。


やはりあっていたのだと。こっちが本物だと思った。



冷たい太陽の光を受けて、彼岸花は爛爛と輝いていた。



吹く風には絶え間なくさらされるが、それさえも心地よかった。



彼岸花が舞い散った。私たちを囲むようにあった。



君の手に触れたとき、ひどく冷たく感じた。



そして、君は冷たくほほ笑んだ。



その瞬間崩れていく視界、気づいた間違い。胸に感じる異物と違う確かな痛み。



方位磁石の針が刺さっている。そう気付いた。



なぜ気づかなかったんだ、君は私を待ちなどしないと・・・



君はいつでも走り抜けていくのだと・・・



崩れていく視界の中には、確かに君が見えた。



壊れた君が・・・




妻よ・・・すまない、思い出すのが遅くなって。もう戻れないのに後悔ばかりが――――



膝から崩れ落ち、塵のごとく私は崩れた。






ピー・・・






「手を尽くしましたが・・・もう手遅れでした。」


「そんな!主人は!主人は!!」


「っっ・・・申し訳ありません。」



その周りには・・・



・・・ひどく影を落とした彼岸花が枯れていた。

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