1日目 邂逅
「「無理です!」」
レイくんはそれを聞いて笑い出した。
「ハハハ!そんなにも仲が良いなら出来るよ~。僕とおじさんだってできるんだから。まぁ僕らは、長い時間で距離感も仲の良さも良くなったし、少しじゃれあいのコミュニケーションが他の人より喧嘩よりなだけだし、おじさんが合わせてくれるから出来てるんだけどね。君たちはもともと仲いいんだから。」
「最初から一緒に死神になったんじゃないんですか?」
「すごく相性完璧じゃないっすか。もはや熟練コンビって感じっすよ。最初は違ったんすか?」
あれだけの仲の良さを見せて、実は仲が良くないのだろうか?いや、そんな訳がないだろう。
僕もテツもそう思い聞いた。
「出会いが特殊だからね~。しかも二回目のコンビだからこれだけ合うだけだよ~。まぁ仲良くないって言ったら嘘になるけどね。もともと、僕が霊で、おじさんが死神って立場で出会ったからね~。それに、おじさんはそのころは変わる前だったからね。おじさんが変わってからだよ、本心まで理解できるようになったのは。それまでは、僕はおじさんによって助けられた恩義と、今後も助けてくれるだろうっていう打算。おじさんは、無理に連れてきたのかもしれないという後ろめたさと、今まで霊について考えてなかったっていう申し訳なさから関係を持ってたからね。まぁ変わった原因は僕だって言われてるから、お互いに近づいてったてことじゃない?」
そういって鼻をこすって気恥ずかしそうにしてるのを見ると、何処かに既視感を覚えた。
「なんか、自分の父親との関係『仲いいね』って言われて恥ずかしがってる子供みたいっすね。」
テツの言葉に納得した。確かに、それだ。
それを言われたレイくんは「うっそ親子に見える~えへへへ~」と喜んでいた。
そんな時にお兄さんが帰ってきた。レイくんは気づいてないみたいだ。
「おう、どうした?次の人まだ呼んでないのか?」
「ひゃう!ど、どどどどうしたの??なんでもないよ???」
すっごく動揺してるし顔も赤くなってる。なんだか見ていてほっこりする。
「そうかじゃあ呼ぶか。大丈夫か?」
「大丈夫だよ!早く仕事終わらせよう!」
「そうだな。」
そう言ってガラケーを手に取って何処かへ電話をかけた。
「おう、俺だ。え?あーめんどくさいな、番号言わなくていいだろ?なに?今日は上司がいるだって?仕方ねぇ、そういう時もあるもんな。6682324204879923だじゃあ転送頼むわ。なに?指名依頼?課長から?了解。ランクは?Bな?OKOK。じゃあ確認するぞ。特殊魂、記憶の一部欠損。補完するか全部抜いてこちらで魂の補強。霊魂ランクはC。難易度Bな。了承する。んで報酬は・・・」
その言葉を聞いたテツがレイくんに話しかけた。
「なぁレイくんさん、霊魂ランクとかとくしゅこん?とか魂の補強ってなんすか?」
「レイくんっ呼び捨てでいいのに、うーんと霊魂ランクは、魂の持つ強さだね。見た目の靄みたいな霊子の量が変わる。さっきのおじいさんもCだよ。BとかAになるとかなり強くてSになると僕レベル・・・といってもA+ぐらいに強い力を持ってるか、おじさんぐらい肝に座ったBランクじゃないとまず立ち会えない。まずどれだけ肝が据わっていようとC以下は会っただけで平伏しちゃうね。人間なら大体D~Bだよ。で、特殊魂は何か特殊な事情を持った魂。いわば地縛霊の魂付きみたいな感じかな。最後に、魂の補強は、さっきおじさんが言ってた生き様が刻まれるって話し合ったでしょ?それですり減った魂を、元に戻るように特殊な薬を使って治療したり、するってこと。中身が欠損してなければ、天獄での暮らしか仕事してる間に治る、まぁ前言ってた懲役って言ったってあくまでも魂の休養期間ってことだから。」
「てか調子戻ったんですね。親子って言われた後の影響すごかったじゃないっすか。」
「なななななんのことおおお?」
めっちゃ動揺してる。まだのこってるのか。
これで仕事して大丈夫なのか?
「おいもう来るぞ~。難易度B~B+だ。気ぃ引き締めろ。そこの二人は見とけよ。明日から実践してもらうからな。」
「了解っす。」
「分かりました。」
「ほらお出ましだ。」
いきなり椅子の周りの空間が歪んだと思ったら、薄く青い靄が現れた。
あぁ魂が来たのか。そう思っても、知覚しても慣れないものだ。
『すいませ~ん、ここで合ってますよね。』
「合ってるぞ。どうも死神です、って言ってもあんまり分からんよな。とりあえずそんなもんだと思っといてくれや。」
『はーい。』
この声の感じ、女性だろう。しかも若めの女性だ。
『それで~私は何をすればいいんですか?』
「そうだな。経歴を聞かせて・・・って言っても無理か、記憶ねぇんだもんな。」
『完全にないわけじゃないですよ。ただ、死亡したときから~三年?ぐらいが分からないね。高校で学んだ知識はあるんですけどね。』
「待てよ?知識があるのに、記憶がない?欠損かそれ?」
「まぁある種の欠損もしくは記憶の封印だろうね~。死因はちなみに、鋭利な武器。死神の目撃者っていうか、死亡代行者曰く、糸鋸による胴体切断の失血死だよ~。記憶は戻ってきた?」
『いいえ全く。』
「マジでぇ~無理じゃん。」
「毎度諦めんの早いんだよ。あー、経歴を知らん上に、罪を受け入れてんのにここに来たのはやっぱり・・・魂の傷の影響か?」
「うん、今のままじゃ治せないってさ。」
「マジかー・・・考えるちょっと待て。レイ、とりあえず罪状読み上げてくれ。」
「りょーかい。」
おじさんに返答して、レイくんはスマホを取り出した。
スマホ?お兄さんはガラケーなのに?
「んじゃ、そこのスクリーンに・・・ごめん、おじさんこりゃダメだよ。即刻この子を叩き落すべきだ。200年なんて今までいない。僕たちがどれだけ頑張って規定から離しても、150年は固い。それに、もしもこれを映したら、記憶を失っているこの子がもたな「待ってくれ。」哲也君?」
急にテツが発言した。
「あ、いや大したことじゃないんすよ・・・そこに理由はあるのかもしれない。俺はそう思っただけっす。」
「いや、その子のことを思うならやめておくべきだよ。哲也君健太君こっちに来て。今見せるよ。」
そう言って、少し裾のだぼ着いたコートをぶんぶんと降っテツと僕を呼んだ。
二人で近づいて向けられたスマホの見てみると、
『【罪状】
無益な他殺・・・動物2034うち同族20、虫105324、植物86733
自殺幇助・・・・31
他殺幇助・・・・58』
絶句した。
「うっそだろおい・・・ケンちゃんこれは、むぐっ。」
「だめだ、テツ。僕たちは絶対に口を出しちゃいけないんだ。これに関してはおじいさんよりも、どうしようもない。僕らはまだ2人目だ。年季で勝る二人に任せるのが最善だろう。」
『あのう、どうしました?やっぱり叩き落すって言われてただけあって、罪は重いんですか?』
「っっっ!?」
あれだけのことをしておいて、そんなことを言うのか!?こいつは!?
同族、つまりは人間を20人も殺したうえで、自殺幇助、他殺幇助だぞ!?実質殺した人数は100人を超えてるのに何を言って・・・
「落ち着け、ケンちゃん。俺が返すことじゃないかもしれない。でもな、ひどい顔してるぞ。ケンちゃん、お前にはお前だけの強みがある。だろ?ならそれを活かせ。捨てるな。俺はそんなに頭が良くない。でも、お前ならおじさんに解決策を出せるんじゃないか?見落としてる情報がないか、見直せ。」
「悪いな、おじさんで・・・こういう時は本当にひらめきが欲しいな。あの子に見せるのは最終手段なんだろ?なら、やることは決まってんな。課長からこう言われてんだ。『頭のいいバカと頭の悪い超バカのコンビだけど、片方は思考と発想が。もう片方は行動力と感性が素晴らしい。存分に使ってあげて下さい』だとよ。今メールが来てるぞ。」
おじさんは笑いながらガラケーの画面を見せると、魂のほうに向きなおった。
レイくんは苦笑いしながら僕の手に、スマホを渡してきた。
「頼むよ?ああなるとおじさんは一ミリも考えを変えないから。情報が足りなきゃそこから引き出して。その子の死亡時の情報や罪なら基本載ってるから。テツ君も手伝ってあげてね」
「「了解です(っす)。」」
僕たちの戦いが始まった。
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