第15話 これがJK勇者の日常
そんなこんなで始まった私の新しい生活は、文字通り毎日が『冒険』の連続だった。
この世界で勇者(嫌々ながら)として生き延びていく為には、慣れない日常生活はもとより、自分自身の能力もしっかりと上げてパーティを支えていかなくてはいけない。
その為に時には冒険者としてダンジョンへと旅立ち、最高のチームワークでーー
「ちょっと浅田さん! 今ぜったい私のこと狙ったでしょ⁉︎」
「何を言うホウキ勇者! お前が私の魔法の邪魔をしたんだろ!」
だだっぴろい草原で、私は無数のゴブリンに追いかけられながら仲間と言葉のバトルを繰り広げていた。
「そんなことどうでもいいから早くこのゴブリン何とかしてよ!」
「ええい私に指図するな! 魔法を使うには呪文が必要なのだ」
「呪文呪文って、ただ歴史について喋ってるだけじゃん! そんな呪文必要ないから早く! 早く魔法を!!」
「なッ⁉︎ 何という失礼な奴……お前こそその手に持ってるホウキでゴブリンを倒せばいいだろ、このホウキ勇者!」
「ホウキじゃないよ! 桜の棒だよ棒!」
そう。これが私、勇者宮園朱莉が初めて手にした武器である天然木、『桜の棒』である。ちなみにその攻撃力は、ウサミーさんいわく桜だけに常に満開で全力らしい。……って、なんか私騙されてない⁉︎
「宮園さん! 前からも来たよ!」
浅田さんの隣にいるサポート担当の和希が私に向かって大声で叫ぶ。
いやちょっと待ってよ。どう考えてもこのフォーメーションおかしいでしょ!
「浅田さん! 早く! 早く魔法を!」
「ええいつべこべとうるさい奴だな……」
やっと本腰を入れてくれたのか、浅田さんが私を追いかけてくるゴブリンに向かって杖を構える。そして、いつものごとく呪文の詠唱がスタート。
「人類の
「もういい! もういいから早くしてぇッ!」
私はわんわんと泣き叫ぶ勢いで必死に歴史マニアに嘆願する。すると草原の風に乗って「ちッ」と浅田さんの舌打ちも一緒に耳に届く。
「これだから歴史を
「ちょ、ちょっと待ってよ……あさだサァァァーンっ!」
頭上に突然黒い雲が現れたかと思うと、直後ゴブリンもろとも私の意識も薄れていき、そんな自分を今度は和希が優しく介抱してくれる。うん、これぞまさに理想のチームプレイ……
そして時には冒険者として、日々の健康をしっかり管理する為に仲間で仲良く食事をーー
「ちょっと浅田さん! 肉ばっかり食べてないで野菜もちゃんと食べなきゃダメでしょ!」
「いちいちうるさい奴だなホウキ勇者は。歴史家には偏食家が多いのだ。それに酒場の野菜は湿気ってて私の口には合わない」
「そんなこと言って風邪引いても知らないからね! ほら和希もちゃんと人参食べる!」
「ぼ、僕はちょっとお腹いっぱいで……」
「はいはーい! じゃあ人参はウサミーがもらいまーす! あ、和希さんそのソース取ってくれます?」
「ちょっとウサミーさん! それはソースかけ過ぎ……って、なんでウサミーさんがこのテーブルにいるのよ⁉︎」
「何を言ってるんですか宮っち。私と宮っちの仲じゃないですか!」
「いやいや仲とか関係ないから! ってウサミーさんちゃっかり和希の腕に引っ付くのやめてよ!」
「ほえ?」
「ほえ? じゃないわよほえじゃ! ほら和希もすぐ離れて!」
「で、でもウサミーさんの力が強くて……」
「ああもう……って浅田さん! 今こっそり私の肉食べたでしょッ!」
……そして時には冒険者として、体をしっかり休める為に仲間と仲良くお泊まり会がーー
「ちょっと待ってよ! なんで私が一人で、そっちが二人なの⁉︎」
「当たり前だホウキ勇者。だってこの部屋にはベッドが二つしかないんだぞ」
「いやいやいや、だからおかしいでしょ! 普通それだったら健全さを考えて私と浅田さんが一緒のベッドでしょ!」
「何をおっしゃいますか勇者様。勇者様のような立派なお方に狭いベッドを使わせるわけにはいかないじゃないですか。……ね、ねぇ高橋くん?」
「ちょーっとそこ! 和希に話しかける時だけ声のトーン変えるのやめなさいよ! あと甘えたな口調になるのも! って、和希も男の子なんだからそういう時はちゃんと断らないとダメでしょ!」
「で、でも浅田さんが一人で寝るのが怖いって……」
「ダメだよ和希そんな無防備なこと言ってたら! そんな調子だといつか知らない女の人に食べられちゃうよ!」
「ええいッ、さっきからうるさいな宮園朱莉! 魔術師は魔術師同士、古来より一緒にお寝んねにゃんにゃすると歴史も相場も決まっているのだ!」
「ちょっと何よそのウサミーさん的発言! やめてよ! 気になって眠れないじゃん!」
……とまあこんな感じで私たち三人はいつも仲良く、それはそれはとても順調に異世界生活を…………
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