第11話 ゴブリン出現!

「ゴブリンが出たぞー!!」

 

 まどろむ意識の中で、不思議な言葉が聞こえてきたような気がして私はそっと瞼をあげた。

 すると視界の中には、今にも唇と唇が触れそうなほどの至近距離ですやすやと寝息を立てている和希の顔。


「うひゃあッ!」

 

 一瞬で目が覚めた私は、ベッドから慌てて飛び起きた。そして頭の中を急いで整理する。


 え、えーと……たしか昨日は異世界にやってきて和希を見つけて……それで宿屋にやってきたらベッドが一つしかなくて……


 やっと今の状況が整理できたものの、かあっと思わず顔を赤くした私は慌てて自分の服装をチェックする。うん、ちゃんと制服は着たままだし、下着にも乱れはなし。大丈夫……何も間違いは犯してはいない!

 そんなことを思った私は念のためにと巻物を取り出すと自分のステータスをチェックする。そこには昨日から変わらず『女子力3』の私の能力値。

 その数字を見てホッと一瞬胸を撫で下ろすも、ふと冷静な自分が心の中で顔を出して私に囁く。これはこれで問題なのではないでろうか? と。

 なんてことを思い、安堵なのか諦めなのかよくわからないため息を吐き出した時、再び窓の向こうから叫び声が聞こえてきた。


「ゴブリンだ! ゴブリンが出たぞー!」


「え?」


 つい先ほど夢の中で聞いたと思った声は、どうやら現実の声だったようだ。

 私はその声につられるように窓まで近づくと、二階から外の景色を見下ろしてみる。すると噴水がある広場のようなところでたくさんの人たちが何やら集まってるではないか。


「何だろう?」


 ぼそりと声を漏らした時、ちょうど目を覚ました和希の声が背中越しから聞こえてきた。


「おはよう……宮園さん」

 

 寝癖をつけてゴシゴシと目を擦っている和希。普段見ることのない彼のそんな無防備な姿に一瞬気を取られるも、私はすぐに思考を戻すと和希に尋ねた。


「ねえ和希、ゴブリンって何?」


「え?」


 まだ起きたてで頭が回っていないのか、和希は間の抜けたような声を漏らすとポカンとした表情を浮かべた。と、その直後再び「ゴブリンだー!」と同じ台詞が窓の向こうから聞こえてきた。


「ゴブリンって……まさか!」


 私と同じようにベッドから飛び起きた和希はそのまま窓際までやってくると外の様子を確かめた。そしてすぐに私の方を向く。


「宮園さん、大変だ! 僕たちもすぐに行かないと」


「え?」


 まったく状況が理解できず今度は私がポカンとした表情を浮かべると、和希が真剣な顔つきで力強く言った。


「僕たちがゴブリンを倒さないと!」


「…………はい?」

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