第5話 はてさて・・・

勘太郎が、なぜ新藤幸太郎は高い能力と考えたのか。

勘太郎が新藤家を訪ねた時、幸太郎は、明らかに勘太郎を疑っていた。

疑惑を持ちきれないところが、経験不足ということだろう。

とはいえ、元々疑惑のない勘太郎のことなので、持ち続けることは、一流刑事でも無理だろう。

木田と小林は新藤幸太郎の案内で、新藤司の交友関係を周り始めた。

数日回ったところで、新藤幸太郎があることに気がついた。

何件かで、勘太郎が訪問した形跡があった。

『何か、法則があるんでしょ

 うか。

 けっこう、とびとびです

 よね。』

木田は、勘太郎が何か掴みかけていることをわかる。

『その何かを、聞きに行こう。』

3人で、警察庁に向かった。

通されたのは、刑事企画課の奥の重苦しい雰囲気の部屋。

大きな机と、応接セットが配置されている。

3人は、応接に座るように言われ、言われた通りに待っていた。

『よぉ、木田君。小林君。

 久し振りですねぇ。

 勘太郎に捜査を邪魔されて

 ないかい。』

木田と小林が、飛び上がって気をつけの姿勢になって敬礼したので、新藤幸太郎も、それに習った。

『お久し振りです。

 刑事局長。』

新藤幸太郎は、震え出した。

無理もなかった。

刑事局長など、一般の刑事にとっては雲の上の存在。

本来なら、会えるはずもない存在なのに、木田と小林は、覚えてもらっている。

どうやら、とんでもないチームに入れられたらしい。

ようやく、勘太郎が部屋に来て応接に座る。

『勘太郎・・・

 捜査の邪魔するな。

 広域捜査の指令は、まだ申

 請されただけや。』

『わかってるよオヤジ・・

 本間警部。本当に申請した

 んですね。』

『えっ・・・

 ま・ま・真鍋さん・・・

 オヤジって・・・。』

『あぁ・・・

 真鍋勘一刑事局長は、僕の

 父ですよ。』

新藤幸太郎、もうどうにでもしてくれという心境。

この日、本間警部により広域捜査の依頼があったため、その準備にとりかかったばかりだった。

『広域捜査班のメンバーに説

 明することになりますので、

 事件の詳細を整理させて下

 さい。』

勘太郎が話し始めた。

勘太郎の呼び込みに応じて20人ほどの捜査員が刑事局長室に入って。

捜査会議になった。

『被害者は、新藤司氏29歳、

 フリーのジャーナリスト

 です。

 因みに、ここにいる警視庁

 捜査1課の新藤幸太郎刑事

 の従兄弟に当たります。

 死因は、ジデルベン系の

 アルカロイドによる中毒。

 吹き矢の先に、針を仕

 込んで、針に猛毒のトリカ

 ブトが塗られていた。

 これまでの、捜査の結果で

 すけど。

 純粋な日本人の友人は、

 皆。被害者が恨まれたり、

 他人と競争するような性格

 やないと言うてます。

 殺される理由がわからない

 ということです。』

木田と小林は、不思議でたまらなくなった。

『勘太郎先輩・・・

 関係者宅をとびとびに訪問

 してはったのは・・・。』

小林、的確な質問をするようになっている。

『香りだよ。

 新藤家にお焼香に行った

 時に、乳香の香りがしてい

 たんよ。

 非常に高価なお香やし、特

 殊なもんだけに、何かの手

 がかりにならへんもんかい

 なって思って。

 結果、新藤司さんが、IS

 について、取材を重ねてた

 ことがわかった。

 イスラムと関係があるとは

 思いたくないが。

 何かしらの手がかりはある

 やろう。

 ほんまもんのISやったら

 イランとかイラクに行って

 捕まってインターネット動

 画で殺害されるやろう。

 それが国内で、それも東京

 やなくて京都の祇園祭で。

 そんなまわりくどい。

 その辺りに、何かありそう

 やと思ってますが。』

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