第4話 鍵は

勘太郎と萌が、東京に帰った翌日。

東京都足立区北千住の新藤司宅のインターホンを押す勘太郎。

『京都の八坂神社で、司さんが倒れられた時に、そばに居てまして、救急車と警察を呼んだ者ですが。

せめて、お焼香だけでも、させて、いただきたいのですが。』

新藤司は、母親と姉との3人で暮らしていた。

しかし、この時はまだ、葬儀の翌日ということもあり、親族親戚が、揃っていた。

人数が揃っていたこともあり、快く受け入れてくれた。

焼香を終えて、家族に司の最後の様子を説明して帰ろうとしていた時、スーツ姿の青年が話しかけた。

『京都の警察本部の捜査1課

 のお部屋で、お見かけした

 と思うんですが。』

新藤司の身元確認で、京都府警察本部捜査1課に行った親族と思われた。

『事情も聞かれてましたし、私、元々あそこで働いてましたので。』

『なるほど、それでここの住所をご存知に。

なら、ひょっとしたらお仲間かもしれませんね。

私は、新藤司とは従兄弟に当たります。

警視庁捜査1課の刑事、新藤幸太郎と申します。』

まだ、勘太郎を信じてはいない。

『警察庁刑事企画課の真鍋です。よろしくお願いします。』

勘太郎は、あえて位と役職は言わなかった。

新藤幸太郎は、勘太郎を事務職くらいに思ったに違いない。

翌日、警視庁捜査1課に本間から捜査協力を依頼する電話が入った。

被害者の新藤司は、京都どころか関西に交友関係が見当たらないという。

『その事件の被害者でしたら、うちの刑事、新藤幸太郎の従兄弟ですので、協力させます。

何かわかるとよろしいんですけど。』

森川警部は、新藤司と幸太郎の関係を知っていた。

新藤幸太郎が、忌引きの申請の時に報告したらしい。

本間の電話によると、木田と小林が、東京に向かっているというが、この日はまだ忌引き中で肝心の新藤幸太郎は休みである。

このことは、当然本間を通じて木田と小林には伝えられた。

千代田区内に、宿を取った木田と小林は、勘太郎に連絡を入れた。

この夜は、久し振りに3人で飲んで、夜も早めに宿に戻った。

翌朝、新藤幸太郎が森川警部から捜査協力の命令を受けているところに、木田と小林が案内されてきた。

『昨日は、司の葬儀の後片付けやら何やら、忌引きの残りを使わせてもらってました。

失礼しました。』

新藤幸太郎は申し訳なさそうに謝罪した。

『いやいや・・・

 到着して、昨年まで仲間や

 った奴と、少し飲んでまし

 たので。』

森川は、まだ木田と小林と勘太郎の関係を知らなかった。

『昨年までのお仲間・・

 ひょっとしたら真鍋さんで

 すか。

 警察庁刑事企画課の。

 気持ち良い方ですよねぇ。

 一昨日、わざわざお焼香に

 来て下さいました。』

ここで森川は、首をひねり出した。

そこに、勘太郎が木田と小林の応援に駆けつけた。

森川警部と警部補の鶴園、木田と小林が、直立不動の姿勢で敬礼しているので、部屋に居た全員が敬礼した。

驚いたのは、新藤幸太郎。

『監理官、おはようございます。』

森川の声で、全員が、ことを把握した。

『おはようございます警視。』

という鶴園警部補の挨拶で、全員がことの重大さを把握した。

『木田警部補は、僕が刑事の

 いろはを教わった師匠で、

 昨年まで相棒にしていただ

 いてました。

 小林君は、後輩で可愛がっ

 てた奴です。』

森川は、正直なところ困惑していた。

手抜きができなくなったのだ。

警察庁刑事企画課監理官が、日本一の検挙率を誇る。

超敏腕刑事だったということは知っていた。

しかも、その勘太郎を指導して相棒にしていた警部補と言えば、その敏腕は聞かなくてもわかる。

ついでに、現在、その木田が指導している小林は、成長著しい若手に決まっているではないか。

『監理官・・・

 あの、木田警部補と小林刑

 事の捜査協力を、新藤君に

 指示したんですが。

 よろしいでしょうか。』

勘太郎は、新藤幸太郎の能力を見抜いていた。

『もちろんです。

 新藤さんは、まだ、目覚め

 てないだけで、かなり高い

 ポテンシャルをお持ちと思

 いますよ。

 新藤さん。木田警部補と小

 林君のこと、よろしくお願

 いします。』

新藤幸太郎は、恐縮してしまった。

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