真田某

 ある朝

  真田薫が

 何か

 気がかりな夢から目を覚ますと

  自分が

 寝床の中で

  異性に変わっているのを

 発見した


私が女を失ってから       僕が男を失ってから

巡る世界は変化した       時の流れは変化した

朝に夕にと行き交う鳥も   夢を片手にくつろぐ時も

木々のざわめく穀雨の様も 一夜の終わりの虚しい時も

大地を駆ける夕日の色も  大地に揺れる目覚めの時も

誰もが安らぐ漆黒の世も     誰もが騒ぐ南中時も

私が女性を失ってから      僕が男を失ってから

全て視界は変化した


出合うことのない世界

 隔絶されたせい

人々の営みの中で

 真田薫がそれを越える

真田薫の身体の中で

 変わらぬものと

  変わるもの

この二つが一つとなって

 今

世界に花開く



グルコースグルコース6リン酸フルクトース6リン酸フ

吸収後                   ルクト

動消化  友達は一夜で消えた        ―ス16

摂食行  両親は一晩嘆いた         リン酸

食欲と   恋人は嘘だと叫んだ       GAP

ルギー  自分でも信じられない       13ビス

酸エネ   それでも            ホスホ

サロ酢    自分が異性となって      グリセ

酸オキ   それでも            リン酸

リンゴ    自分が男になって       3ホス

ル酸L   それでも            ホグリ

酸フマ    自分が女になって       セリン

コハク  初めて分かる           酸2ホ

CoA   相手の思い           スホグ

ニシル   世界の重さ           リセリ

酸スク   ヒトの優しさ          ン酸ホ

ルタル   人の悲しさ           スホエ

キソグ  二人の薫が            ノール

酸2オ   かおりとかおるが        ピルビ

コハク  それを感じる           ン酸ピ

キサロ                   ルビン

オイソクエン酸アコニット酸クエン酸アセチルCoA酸



僕は薫

私は薫

私はかおり

僕はかおる

二人が互いに異性を分かち

二人の真田某が

二人の真田薫が分かつ

性の流れを二人が分かつ


僕は女が分からない

 二つの性も

 脳の仕組みも

 社会の形も

 心の形も

僕は女が分からない


私は男が分からない

 一つの性も

 脳の作りも

 友の形も

 心の形も

私は男が分からない


僕は女性が分からない

私は男が分からない

それでも男のことなら分かる

それでも女のことなら分かる

自分の性なら自分は分かる

相手の性なら自分は知らない



本当にそうなのか

  本当は違うのか


女で男を見詰めなおして

 初めて分かるものがある

男で女を見詰めなおして

 初めて分かるものがある

普段は見えないものが見え出し

 普段は避けてるものが見え出し

  男の真の姿が現れ

  女の真の姿が現れ

僕は女性を静かに抱く

私は男を静かに抱く

 真田薫を

 真田薫を

僕は真田かおりを抱く

私は真田かおるを抱く


盆の月下に二人抱き合う

 人の心を知りえた夕に

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