前に続く道

僕の前には道はない

 そう言い残す人がいた

僕の後ろに道ができる

 そう書き残す人がいた


しかし


あの日私の前から道が消えた

闇夜の底に消え失せた

土も揺れ 空も揺れ

私は逃げた 道も逃げた 橋も逃げた


そして

阿蘇の地は独りとなった

神代より続く尊さは

再び私たちに足を踏み入れるのを許さず

天の岩戸のごとく閉ざされた


それに抗うものがいた

時に微笑み

時には戯け

常にまっすぐ

振り返ることなく


それに抗うものがいた

人に知られず

人に見られず

常にひたむき

求めることなく


それに抗うものがいた

時には歌い

時には走り

常に愛され

諦めることなく


令和二年十月三日

私の前に道ができる

集められた輝きは

花と咲き

月に満ちて

夢をつなげる


連なる山並みに

私は一粒の真珠を認め

その道を行こう

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