花冠

君はその花を見初めた


純白のその姿はいかにも可憐で

芳醇なその香りはいかにも優雅で

温厚なその輝きはいかにも高貴で


幼い君は何の疑いも持たず

満面の笑みで僕に捧げた


黒土がほろりと風に舞い

ひげ根が憐れに宙を往く

それでも僕は手に取って

君の喜色に酔いしれた


君の編んだ花冠を被り

電車に乗って街を往く

誇らしげな君の顔に

僕もまた静かに胸が躍った


そして次の春

君はその丘で笑顔を見失った

緑の一面と墓標のような黒い穴が

ただ僕たちを非難する

あの花は一輪残さず消え去った

僅かに散った花弁を遺し

ただ僕たちを非難する


帰りの電車で君は俯き

帰りの電車で僕は見据えた

小さな美酒に酔った自分の愚かさを

遥か昔の堂々たる暴君を

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