恋愛相談

宵埜白猫

恋愛相談

「ねぇ和花のどか、私好きな人ができたかも」


 夕日に照らされてオレンジ色に染まる教室に、窓から入る風がカーテンを揺らす。

 ショートカットの明るい茶髪を風に撫でられながら、幼馴染の伊井野いいの恵美めぐみはそう告げた。

 

「へぇ、どんな人なの?」

「えっとね、優しくて、かっこよくて、一緒にいてすごく安心する人だよ」

「そう……」


 恵美は小さな体を恥ずかしそうに揺らしながら、頬を染める。

 その顔はまさに恋する乙女のようで、それを見ると胸がズキリと痛む。

 聞きたくなかったなぁ。


「ねぇ、どうしたの?」


 恵美が心配そうに私を見上げる。


「……ううん。何でもないよ」

「それでね、どうしたらいいかな?」

「恵美はその人のこと好きなんでしょ?」

「うん……」

「……じゃあ、告白してみたら?」


 痛む胸をそっと押さえて声を絞り出す。


「うん。そうだね……」

「そんな不安そうな顔しないで。恵美ならきっと大丈夫だよ」

「ほんと?」

「うん。だって恵美はこんなに可愛いんだもん……大丈夫だよ」


 不安そうな恵美の頭を優しく撫でる。


「ありがとう。和花に相談できてよかったよ」

「いつでも相談して。応援してる」

「うん。また明日ね」


 そう言って恵美は教室を後にした。


「はぁ、思ってたよりつらいな」


 私はずっと前から恵美のことが好きだ。

 恵美といるのは心地よくて、友達のままでもずっと一緒にいれれば良いと思ってた。

 だからこんな日が来るなんて考えもしなかった。

 そうだよね、女の子同士なんて変だよね。

 けど……。


「わたしも告白すればよかったな……」


 一人きりの教室に、溜息が一つこぼれた。




「おはよ、恵美」

「和花!おはよ!」


 翌日、学校に行く途中で恵美と会った。


「今日告白するの?」

「うん……ねぇ、練習してもいいかな?」

「……いいよ」


 恵美が目を閉じて深呼吸をする。


「あのね、私ずっと前から、和花のことが好き!」


 真剣な目で、恵美が私を見つめる。


「れ、練習だよね?」

「違うよ。私が好きなのは和花!優しくて、いつも落ち着いててかっこいもん!」


 頬を染めて、目を潤めながら、恵美は続ける。


「それに和花といるといつもドキドキするんだ……でも、告白して和花に嫌われるのが怖くてずっと言えなかった」

「嫌いになんてならないよ」


 昨日とは別の痛みが、胸の奥を刺激する。


「私も恵美のことが好き。ずっと一緒にいてくれる?」

「うん!」

「行こ、恵美」


 私が差し出した手に小さな恵美の手が重なって、熱が伝わってくる。

 ドキドキと脈打つ胸の音がうるさくて、いつもはうるさいはずの周りの声は聞こえない。

 それでも恵美が俯きながら零した小さなその言葉だけははっきりと聞こえてきて、私の心を溶かしていった。


「大好きだよ、和花」

   

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恋愛相談 宵埜白猫 @shironeko98

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