セッションF
一限目ギリ間に合うかなって時間。
駐輪場にGPZを停める。走ればまだ間に合うものの、なんとなく重い足は教室に向かおうとしない。そもそも今日の私、革パンツにライディングブーツで来てるしね。そりゃ物理的に重い筈だ。
タバコを出して一服していると遠くから野太い排気音が聞こえてきた。宗則のCB1100FCの音だ。一限目に間に合わせるつもりなのかかなり回している。一限目を目指してギリギリに到着した私がここでタバコを吸ってサボタージュしているのだから奴も勿論間に合う訳がない。
駐輪場に入ってきた宗則と目が合う。
「あれ? 授業は?」シールドを上げながら宗則。
「オマエモナー」タバコを挟んだ指二本で宗則を指差し、煙を吐き出しながら返す。
CBを整列させず雑に停めてメットを脱ぐ宗則。私の下半身を見ながら呟く。いやん。
「久々(走り)行くべか?」
「イイね」
普段は
大学から茅ヶ崎駅方向に七曲りを下って行き、途中で宗則のアパートに寄る。いつも通り外で一服しながら宗則の着替えを待つ。
「お待たせー」
ちょうどタバコ一本分の時間で革ツナギに着替えた宗則がフロントのジッパーを上げながら階段を降りてきた。
「やっぱツナギいいね。アタシも欲しいなー」
「中古でだいぶくたびれてるけど、それでもやっぱ安心感違うよ。あと身体がそういう姿勢で固定されるからライディングし易くなるよ。その分それ以外のことがだいぶやりにくいけど」
「つっても値段がねー。レディースサイズなんて中々中古出ないだろうし」
「キョウならメンズサイズでもいけんじゃね?」
「どーゆー意味よ」バシッと、宗則に腹パンしながら突っ込む。
「革ツナギの上からなぐられてもたいしてきかへんもんやなって」と宗則。
「何ソレ?」
「何でもない……」
因みにあとで聞いたら身長のことだったみたいで。てっきり胸のサイズのことだと思ったよ。
いつも通り有料区間は西湘バイパスだけ使って箱根を目指す。行きは宗則が二台分払い帰りは私が二台分払う。早川出口からは
まずはゆっくりと上って行き、いつも通りしとどの窟にインする。ここまで小一時間、休憩無く走ってきた。孝子なんかはこのまま一本走ってから一服するんだけど、宗則と私で来たときは先に休憩してから走る。何往復もしないのでここで駄弁ってる時間の方が多いかも知れない。
タバコに火をつける。吸い込んだ煙が少し重く感じる。湿度が高い。
「なぁーんか、ちょっと天気微妙くない?」
「大丈夫だべ」と即答する宗則。そういえば晴れ男って天候気にしないんだったな……。
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