チリワイン
孝子を励ます会、in私ん家。
私の時と同じで、30分もしたらいつも通りの飲み会になるだろう本日の飲み会。主役の孝子の趣向をある程度考慮して、ブルスケッタに箱ワイン。あとは冷凍ピザ。
「あんたらのイタリア感って……、そもそもワインもチリワインだし」と言う孝子は嬉しそう。
フランスパンを薄くスライスし、みじん切りにした大量のニンニクとオリーブオイルをまぜたものを塗り、トースターでどんどん焼いていく。四角く切られたトマトの水煮缶を開けてジェノベーゼパスタソースと混ぜ合わせる。ツナ缶を開けて油をきり、オリーブオイルとマヨネーズで緩いペースト状に混ぜてスライスきゅうりを入れさらに混ぜる、最後にタバスコを少し入れてまた混ぜる。オイルサーディンの缶を開けて、一尾を4等分くらいに切る。それらをそれぞれお椀に入れて盛り付け用のスプーンを添える。
ワイングラスはないのでいつも通りコップ酒。フランスパンに各々好きに具材を載せ、孝子の「みんな怪我しないように」という保護者みたいな乾杯の言葉で飲み会は始まった。乾杯して飲み始めるのは珍しい。
「しかしいったい何キロ出てたんだ?」と900SSの惨状を見ているヒロシ。私は離された後だから事故の瞬間は見ていないが離される前にとうに私の限界は超えていた。孝子は今回の転倒の原因がわからないのが怖いとのこと。なにかのミスであれば今後対処できるが、理由がはっきりしないことにはメンタル面で不安が残ると。
「SSはどうすんの?」と宗則。
「とりあえず廃車にはするけど」そりゃそうだろって顔の私と宗則とヒロシ。きょとんとしているユキ。
「次も900SS?」と聞いてみたが、正直まだ全然考えていないとのこと。
私たち学生のバイク選びには、まず最初に予算の問題が重くのしかかる。それでも小学生の頃からのお年玉貯金を全部頭金に注ぎ込んだという、ユキみたいなこだわりタイプもいないこともないけど。
宗則は原チャの頃にヤマハのTZRに乗っていたらしいが、それ以降は知り合いや友達のツテで縁のあるものを乗り継いでいる。結果ホンダ車しかないのはそれだけホンダ車が社会に浸透しているのか、それとも壊れずに人手に渡る確率が高いのか。
ユキとヒロシはツーリングやキャンプを意識しての車種選びが前提だったと聞いたことがある。ユキは原チャ時代ホンダのスーパーカブに乗っていて、中型免許を取った後、見た目が気に入っていたSV400を購入予定だったらしいけど、さんざん悩んだ末に大型まで一気に免許を取って650にしたらしい。400クラスだと長距離は頼りないし、かといってリッタークラスは長距離で疲れない代わりに市街地や普段の取り回しで体力が削られる。車格や排気量を考慮したツーリング思考だ。
ヒロシはどちらかと言うと走破性を重要視した結果TDRに落ち着いたという。中途半端と言われがちだが、林道も峠も街中もそこそここなせる、強いて言えば長距離が弱点か。
問題の孝子はイタリアンバイクってのが大前提。なので知り合いのツテや中古の出物でもない限り、そもそもの車両価格が高額で手が出せないのだ。
「セリエオーロが欲しいー!」と急に雄たけびを上げる孝子。近所付き合いもあるから勘弁してほしい。なんだそりゃ? という顔をしてる私とユキとヒロシに「限定300台、下位機種でも中古で200万を超えるイタリアンバイク」と宗則の解説が入る。
「日本人ならカワサキ乗れ!」と心の声がそのまま出てしまう。
「汁でてるよー」とユキ。
「菌に言われたくない!」と返す。
因みにトモくんは母親がハマっていたドラマでイケメン俳優が乗っていたからTWにしたとか。
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