プレイリスト

 北海道ツーリングの概要も決まり、それぞれ少しずつ用意を進めている。

 元々ツーリンガーのユキやヒロシは、普段から二〜三泊のツーリングも行っているので用意の必要がない。ここ最近、二人は部内でどんな物を持っていけばいいかとかの相談役のようになっている。


「ユキとヒロシってさー、ロングの時ってなんか音楽とか聴いてる?」

 私は普段から頭の中はバイクメインなんだけど、その中でも今は北海道ツーリングへ向けて装備についての知識を吸収したい。

「なんでー?」とのユキの質問に、さすがにずっと直線の道路を何時間も走るのって飽きそうなので、と正直に答える。

「私もヒロシも基本的にはソロの人だから、インカムは持ってないんだけどー」

 ユキの説明によると、まずイヤホンはNGで場合によっては切符を切られるそうだ。それでヘルメット内に薄型ヘッドホンを仕込んだりするらしいんだけど、インカム用にヘッドホンだけ売っているので手っ取り早くはそういうので良いと。お金をかけたくなければ100均のヘッドホンを分解するのも手だと。そこからやっとさっきのインカムの話だ。インカムを使っている人はインカムに音楽を聴ける機能がついている物もあるらしいし、なんだったら音楽を聴く用のインカムもあるとか。

 で、 インカムを使っていないユキとヒロシはBluetoothレシーバーを使ってスマホで音楽を聴いていたりしていて、これで一応電話も受けることができるし、道に自信がない時はスマホで音声ナビも使えると。但し飛ばして走っているとGPSナビの反応が遅れるので常時使えるほど便利ではないみたい。

 次はナビのことも聞こうと思っていたけど、一気に答えに辿り着いた。ユキやヒロシがツーリングやアウトドアの便利グッズの情報交換をいつもしているのは伊達じゃないなと感心した。


 ついでにユキのヘルメットを被らせて貰い、推しアニソンを聴き(かされ?)ながらの電話着信や通話を試させてもらった。通話は相手の声は普通に聞こえるけど、こちらの声は走りながらだと排気音マフラーによっては相手に聞こえにくくなるとお墨付きがあるそうだ。後半はヒロシ談。


 Bluetoothレシーバーも種類が沢山出ているが、ヘルメットの内部に付けられる程度の大きさと、グローブをしていても操作ができるボタンサイズだとあまり選択肢がないそうでユキとヒロシが使ってる商品のリンクをLINEで送ってもらった。体積はほぼ同じっぽいけど、ユキはジェットヘルメットなので細長い形でないと付ける場所がないらしく、対してフルフェイスのヒロシは四角くて平べったい物だった。私にはヒロシの使っている奴の方が使いやすそうだ。


 あと、ついでにヒロシからプレイリストについての小ネタも教えてもらった。

 通学時間と合わせたサイズのリストを作っておくと時間の目安になることや、ロングだと一時間のリストは休憩をとるタイミングの目安になること等。あとは眠くなる系の音楽は避けるべきとかも。

「確かに、時間の目安がつくのはいいね!」と感動してると

「二人ともバイクに時計ついてないのー?」とユキ。

「むぐぐっ」×2

 バイクサークル内で純正でメーターに時計機能が付いているのはユキだけ。

 孝子と宗則はトップブリッジに腕時計を巻き付けっ放しなんだけど、私は美観的にダサいと思うのでやっていない。ヒロシもバイクに腕時計をつけていた時期もあったが振動で壊れて以降はつけなくなった。

 孝子は昔の人たちが付けてたと、お父さん世代の元走り屋の人に聞いて真似をしている。本人的にはカッコいいと思っているのでこの話は孝子としないことにしている。宗則はあまりダサいとか気にしないタイプ。だけど念のため盗られてもいいようにGショックの偽物。孝子は本物BabyGだけど、別れた彼氏にもらったものだから盗まれたならそれはそれで痛くもかゆくもないとか。

 もし私がやるなら、満タン表記からいきなり半分以下になったりしてあんまり役に立っていない燃料計をつぶしてアナログ時計を入れたい。それなら美観を損なわない。だけど、やっぱり私には時計はいらないよね。目安程度だけでいい。

「オートバイを運転するときに時間を気にして移動してはいけない」バイク屋のオヤジの言葉が思い出される。


「あとさ、カラオケ注意だぜ」とヒロシ。カラオケ? と私が聞き返すと

「上機嫌でメットの中で大声で歌ってると案外外に聞こえるみたいで、音楽を聴いてるかどうかは傍から見るとわからないから、かなりヤバい人を見る目で見られる」

「わかるわー」と横でユキが大きく頷いた。

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