ツーリングプラン
今日は北海道ツーリングの全体ミーティングだ。
ユキとヒロシとトモくんで考えたプランは、初日に大洗からみんなでフェリー、苫小牧から二日間は一緒に道東を目指しながらライダースハウス泊のグルメ旅。以降いくつかの名所をピックアップしているので、北上しながら興味あるところが被ったメンツ次第でソロもしくはペアなりで動く、要は三日目と四日目が自由行動って感じ。そして最終日の午前中に最北端で集合。そこから苫小牧の深夜便のフェリーに間に合うようにみんなで南下、時間を見ながら札幌で本場のサッポロラーメンを挟むかどうか判断するというもの。
北海道内ではスタートとゴールが苫小牧と決まっているので、こんな形になった。
一応、仮にスタートとゴールを大洗で考えたけど、他にも仙台まで走ってスタートする方法もあって、という説明もユキからあったが全員初めての北海道ってことで定番の大洗でいいでしょと宗則。特に反論も出なかった。
「ねぇ、クマとかって大丈夫なの?」
「ネットだと遭遇した人いるみたいだねー」
「TDRの加速なら逃げきれないかな?」
「キルスイッチオンオフして〝パン〟とかバックファイアー起こしたら逃げていくんじゃね? エンジンに悪いからやりたくないけど」
スマホでスケジュール確認をしながらバイト先のママとLINEしているという孝子が、スマホを置いてちょっと考えて「私、途中参加になりそう」と話した。
孝子は今のバイト先でそこそこ頼りにされているらしく、土日は書き入れ時なので出来れば出勤して欲しいとお願いされたそうだ。孝子の性格ならまぁ当然断らないだろう。それに普段から出勤のシフトや終電が無くなった時などにタクシー代を出してくれたりと色々融通を利かせてもらっている恩があるので、できればママに協力したいと。
基本、サバサバした性格のキツさが目立つ孝子だが、本質では義理堅いイイ奴。わかってはいたけど、こういう面を再確認できると嬉しい。けど〝ママ〟って誰?
「ある程度みんなの行先事前に聞いといて合流できそうだったら合流する。最終目的地の宗谷岬までには確実に照準合わせとく」と孝子。
「もちろん地元の峠にも行くつもり」と小声で付け加える。
「あのー」とトモくんが小さく挙手する。
「前々から思ってたんですが、流石にLINEくらいは使いませんか? 今からライングループ作って慣れておけばと思うんですが……」
「うーん」とまたもわざとらしく腕組みをした後、やや勿体付けて説明をする宗則。
バイクサークルがあまりメールやスマホを活用していないのは、元々はできるだけ実際に会う機会を増やそうと大して用事がなくてもバイクに乗って会いに行こう、と当初のメンバーがやっていた風習の名残りらしい。初めて聞いたよ私。
「今回、流石に北海道の広さと観光名所の多さを考えると、積極的に会うためにLINEを利用するってことで、解禁でいいと思う」ということで、現サークル代表の判断で『TT-W』のライングループがその場で作られた。提案及び事務作業をしたトモくんに感謝。それぞれ使用頻度は違えど元々LINEはみんな使っているので、今更だが初めて全員がお互いのIDを知ることになる。やっと安心二十一世紀旅行。
お互いのアイコンを見てしばし沈黙。
「シンプソン被ってる写真はキョウさんらしいです」とトモくん。
「宗則は安定の設定なし」と私。
「ユキのこのイラスト誰が描いたの? そっくりじゃん」ヒロシ。
「ヒロシのTDRのフロントカウルのアップはバイク乗りあるある過ぎてダサい」孝子。
「トモくんこれは盛り過ぎじゃない?」ユキ。
「あ、それ母さんが好きなドラマに出てた俳優で……」トモくん補足。
「田村はコレ黒く塗り潰さなくて大丈夫? んで孝子のこの妖艶な写真はどこで?」と宗則。
「宣材用」とスマホで全員のIDを登録承認しながら孝子が呟く。
「宣材ッ?(洗剤?)」全員(トモくん)。
「もしかして『TT-W』って名前もなんか由来とかあるの?」といい機会なので聞いてみた。
「あ、僕も気になります」とトモくん。トモくんは自分のバイクの名前と似ていると思ったのがそもそもの入部のきっかけ。確かに気になるはずだ。
「もともと〝Two Wheeler〟って名前で二輪者って意味だったんだけど、どっかの代の先輩でサイドカーで入部した強者がいたんだよね。それで〝Two & Three Wheeler〟そっから略されて今『TT-W』」
いつか未来に一輪車バイクが発売されたらどうするつもりなのか。
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