出発

 今回、途中合流や途中解散もあるし、中々のロングツーリング。宗則の判断でサークル企画のツーリングとしてのスタート地点とゴール地点は大洗港になった。

 スタートで前入りしても良しって所もだけど、大事なのは主に帰り。北海道から帰ってきて、個人の判断で茨城でもう一泊しても良いと言う所。現状、バイクスキルにも旅スキルにもバラ付きがあるのと、やはりバイクサークルとしては意外と女子の人数が多目という点も考慮した結果だろう。もちろん、希望者がいればツーリングの隊列で宗則が先導して学校までの引率も考えているとのこと。


 なので私は、大洗までは時間的な余裕を十分にとって下道で向かうことにした。因みに孝子は後合流なので出発場所すら大洗かどうか不明、ユキとヒロシはそれぞれ別々に向かいはするが高速を使うと言っていた。二人ともETCが付いてるからその方が合理的よね。宗則とトモくんもやはり下道チョイス。そもそも北海道ツーリングですでに結構な出費になる。みんなそれぞれバイトなり、親からの借金なり、貯金を崩すなりで臨むことになる。ここで下道を選択肢に選べるのはありがたい。どうせフェリーに乗ってしまえば寝るくらいしかできないから体力的なことも気にしなくていいし。

 私が選んだのは246号から環状七号を繋ぎ足立区から茨城へ北上する下道ルート。

 フェリー出航時間に余裕をもって着くように走っていたら、茨城に入ったあたりで同じルートを選択していた宗則のCBが結構な速度差で追い抜いて行った。無理しない範囲で追いつくならと、何台か車線変更で追い抜いていくと信号待ちで追いついた。横に並んで軽く手を上げる。

「ニンジャいたなーとは一瞬思ったけど、やっぱキョウだったか」とメットを寄せて大声で話す宗則。

「着く前にコンビニ行きたい!」とこちらも大声。

 一緒に走り、大洗港フェリーターミナルに着く手前でコンビニに寄り、食事と寝酒程度のお酒を買った。

「ご飯食べてないの?」やはりおにぎりやチューハイなどを買っている宗則に聞く。

「時間的に船の中かなと」二人とも船上コンビニディナー予定。

「そだねー。全員で船内レストランとか行ってもよかったかもね」

「まぁ、今回北海道上陸後がメインだし。サークルとしてのロングは二~三日分かなとは思ってる。なんでその他の要素はその時々の気分でいいかなと」

 コンビニを出てバイク駐輪場に向かう。まだユキとヒロシとトモくんは見当たらない。私たちが一番乗りのようだ。バイクを停めてメットを脱ぐ。革ジャンも脱いでタンデム席に満載の荷物の上に掛ける。

「宗則さ、三年になってやっぱ部長とか意識してる?」

「そりゃしてるよ」

「そっか、今回のツーリングプランの件とか見ててそうかなって。アタシに協力できることがあったら遠慮せず言ってね」

「りょー解! まぁアレは他にも意図があるっちゃ、あるんだけど……」

 おそらく、トモくんを育てようとしている意図があることは想像できた。そこからは、宗則とGPZやCBなどのホイール流用に関するバイク談議で時間を潰した。

 ややすると聞きなれた排気音が聞こえてきた。心地よい低音の太鼓はユキ、耳障りなビブラートはヒロシ。

「お疲れー、一緒に来たの?」とヒロシに聞く。

「友部で飯食ってバイク駐輪場に戻ったら隣に見慣れた短刀があったんだよ。こんなSVユキしかいないからね」

 あとはトモくんが来れば全員集合だ。みんなでトモくんを待ちながら話をしているのだけど、話題はいつもよりコロコロと変わる。変わりすぎるくらい変わる。みんなそわそわしているのがわかる。


 そして「ドットットッ」と単気筒の聞きなれた音が聞こえてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る