G.B.
学食でヒロシや宗則たちと歓談してると、何となく視線を感じて辺りを見回す。学食の入口付近でこっちを見ている洋子ちゃんと目が合う。右手を挙げた後、私に手招きをしている。「ちょっと友達のとこ行ってくる」と宗則とヒロシに告げて椅子に掛けてた革ジャンを羽織りながら洋子ちゃんの元へ向かう。
「どうしたの? 遠慮しないで声かけてくれれば良かったのに」と言うと
「女子高から短大だったから四大に編入したはいいけど、ちょっとまだ男子が苦手かも」と話す洋子ちゃん。なるほど、そういうものなのか。
どうやら、お願いしていたバイククラブの看板デザインがまとまってきたのでラフの段階だけど見て欲しいとのことだった。外に出てテラス席でスケッチブックを見せてもらう。すごい! 希望通りにすべての要素が入っていて、一番後ろには大きな風があしらわれている。真ん中には女性のイラストが描かれていてこれは私の想像力では出てこなかったと思う。
「あれからたまに駐輪場にバイクを見に行ったりしてて、凄い音にすごい速度でビューンって、まるで戦闘機みたいだなって」あー、駐輪場にインするときもアウトするときもロケット加速、それは間違いなく孝子の748R。洋子ちゃんが言うには、ノーズアートといって、戦闘機に女性の絵が描かれることが多くって、そういうテイストを取り入れたのだとか。
「どう?」と聞かれ、ぜひこれでお願いします! と伝える。
本デザインが上がったらベストにこの刺繍を縫い付けて、これを背負って走る。まだちょっと恥ずかしい気もする。福原さんが着ているのを見たときには全然違和感を感じなかったのは、ずっと着続けていたものだからだろう。あと、色褪せてたから派手に見えなかったのかもしれない。
洋子ちゃんに、色使いを原色寄りで、と追加でお願いをした。
色褪せても大丈夫なように。20年後にかっこよくなるように。
―完―
G.B. 笹岡悠起 @yv-ki_330ka
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